耳よりだより

福祉用具とは?介護保険での購入・レンタルや選び方のポイント

年齢を重ねると、日常生活の動作にやりづらさを感じることがあります。
治療やリハビリをしても日常動作に不便を感じるなら、福祉用具の利用を検討しましょう。

車いすや介護ベッドなどの福祉用具は、適切なものを選ぶことで、本人の自立を促し、家族の介助負担を大きく減らせます。

今回の記事では、「福祉用具」の定義から介護保険を利用したレンタル・購入についてまで解説します。福祉用具を賢く使って、元気で長生きを実現しましょう。

福祉用具とは?

福祉用具の定義

福祉用具とは、加齢や障害などによって、日常生活に支障が出ている人の自立を助ける道具のことです。車いすや介護用ベッド、歩行器などが福祉用具に該当します。

平成5年に施行された「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」では、福祉用具は以下のように定義されています。

福祉用具とは、加齢や障害などによって、日常生活に支障が出ている人の自立を助ける道具のことです。車いすや介護用ベッド、歩行器などが福祉用具に該当します。

平成5年に施行された「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」では、福祉用具は以下のように定義されています。

福祉用具の目的

福祉用具には、次の2つの目的があります。

  • 日常生活に不便を感じる人の自立を助ける
  • 介助者の負担を軽減する

福祉用具は、本人と家族が生活を快適に過ごすために必要なアイテムです。

手すりやスロープ、介護ベッドなどの福祉用具をうまく活用すると、自立の可能性を引き出すことができます。福祉用具を使って「自分でできること」が増えると、介助する家族の負担も軽くなります。

福祉用具を使うと「身体機能は低下する」は誤解

「福祉用具を利用すると、身体機能の低下につながるのでは?」
「福祉用具に頼らず、リハビリをすべき」

このように考える人も、少なからずいらっしゃるでしょう。

リハビリはもちろん大事ですが、リハビリで「どこまで回復するか」は個人差があります。
リハビリしたからといってこれまでのような身体機能に戻るわけではありません。そのため、リハビリに過度な期待を持つのは考えものです。

生活に支障が出ているにもかかわらず福祉用具の利用を拒むと、自然とできることが少なくなります。また、バランスを崩したり無理な体勢になったりして、ケガをする恐れもあります。

一方で、「スムーズに歩行できている」「歩行に不安や困りごとがない」状態にもかかわらず、「心配だから」と歩行器や車いすを使うと、逆に身体機能が低下する恐れがあるため注意が必要です。

生活に不便を感じたら適切に福祉用具を利用することが、身体機能を維持する意味でもおすすめです。

介護保険サービスが利用できる福祉用具

福祉用具の中には、介護保険を利用してレンタルや購入できるものがあります。
介護保険を利用すると、レンタルの場合は月数百円からと費用負担が軽くなります。

▼『福祉用具貸与』:レンタル時に介護保険の給付が受けられる福祉用具
  • 特殊寝台および付属品

  • 床ずれ防止用具

  • 体位変換器

  • 手すり

  • スロープ

  • 車いすおよび付属品

  • 歩行器

  • 歩行補助杖

  • 移動用リフト

  • 徘徊感知機器

  • 自動排泄処理装置

▼『特定福祉用具販売』:購入時に給付が受けられる福祉用具
  • 腰掛便座

  • 自動排泄処理装置の交換可能部品

  • 入浴補助用具

  • 簡易浴槽

  • 移動用リフトのつり具の部品

上記に加え、令和4年4月より「排泄予測支援機器」も給付が受けられる福祉用具に加わりました。

ただし、すべての福祉用具を介護保険で利用できるわけではありません。介護度によって利用できる用品が定められています。

次章より詳しく解説していきます。

介護保険でレンタルできる福祉用具

介護保険でレンタルできる福祉用具

介護保険でレンタルできる福祉用具は13種類(付属品含む)です。
いずれの福祉用具にも、対象となる介護度が定められています。

福祉用具名 要支援1 要支援2 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
特殊寝台および付属品 × × ×
床ずれ防止用具 × × ×
体位変換器 × × ×
手すり
スロープ
車いすおよび付属品 × × ×
歩行器
歩行補助杖
移動用リフト × × ×
徘徊感知機器 × × ×
自動排泄処理装置 × × × × ×

「例外給付」とは?

例外給付とは、介護度が低かったとしても、本人の身体状態によって福祉用具を例外的にレンタルできるケースのことです。
ケアマネジャーや主治医に福祉用具の必要性を認められると、例外給付を受けられる可能性が高くなります。

例外給付を受けるには、申請手続きが必要です。「介護度が低いからレンタルはできない」と諦めずに、ケアマネジャーや主治医に相談してみましょう。

福祉用具をレンタルするメリット

福祉用具をレンタルするメリットは、次のとおりです。

  • 福祉用具にかかる費用が抑えられる
  • 本人の状態に応じて、用具を借り換えられる
  • メンテナンスやアフターフォローが受けられる
  • 不要になった場合の置き場所に困らない

レンタルとは「必要なアイテムを、必要な期間だけ使える」というものです。
高齢者は本人の身体状態が徐々に悪化することがあることから、本人の状態に合った福祉用具をその都度選択できることは大きなメリットでしょう。

福祉用具をレンタルするデメリット

福祉用具をレンタルするデメリットは、次のとおりです。

  • 介護度によって、レンタルできる物が制限される
  • 汚したり、壊したりしないように気を遣う必要がある
  • 長期間利用すると、購入したほうが安く済むことがある

レンタルの福祉用具はあくまで借りものであるため、使い方に配慮が必要です。
日常的に使うアイテムだと、気兼ねなく使えないことにストレスを感じることもあります。

購入時に介護保険の給付が受けられる福祉用具

特定福祉用具一覧

購入時に介護保険の給付が受けられる福祉用具を「特定福祉用具」といいます。

特定福祉用具は、肌に直接触れたり、排せつ時に用いられたりする以下の6種目です。

福祉用具名 詳細
腰掛便座 補高便座、ポータブルトイレ、和式の上に置いて腰掛式に変換する便座など
自動排泄処理装置の交換可能部品
入浴補助用具 シャワーチェア、浴槽内手すり、浴槽内いす、バスボード、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルトなど
簡易浴槽 空気式または折りたたみ式のもの
移動用リフトのつり具の部品
排泄予測支援機器

上記の6種目は、介護度にかかわらず介護保険の給付が受けられます。
給付の上限は、1年間(4月1日〜翌年3月31日まで)で10万円(税込)です。

福祉用具を購入するメリット

福祉用具を購入するメリットは、次のとおりです。

  • 気兼ねなく使える
  • 好みのものが選べる
  • 長期間利用する場合は、レンタルよりもコストがかからない

購入すると、傷や汚れを気にしなくて済むので自分の好きなように使えるのが嬉しいですね。福祉用具を選ぶときに、メーカーや機種など選択の幅が広がるのもメリットです。

福祉用具を購入するデメリット

福祉用具をレンタルするデメリットは、次のとおりです。

  • 介護保険の適用となる福祉用具が少ない
  • 本人の状態によっては買い替えの必要がある
  • 使わなくなった際に置き場所や処分に困る

介護保険の適用となる福祉用具が少なく、給付にも年間上限があることから、購入はレンタルよりも費用負担が重くなります。

介護ベッドや車いすなどの大きい福祉用具の場合、使わなくなった際に置き場所や処分方法に手間がかかります。

介護保険で福祉用具を利用する方法

介護保険で福祉用具をレンタルまたは購入するために、必要な手順を解説します。

レンタルの場合

介護保険で福祉用具をレンタルする手順は以下のとおりです。

  1. 地域包括支援センターまたはケアマネジャーに相談する
  2. ケアプランを作成して、福祉用具のレンタル事業者を選ぶ
  3. 福祉用具専門相談員が利用者の自宅を訪問し、本人や家族の希望をヒアリング、生活環境や本人の動作能力などを確認する
  4. 福祉用具専門相談員が、利用者に最適な福祉用具を複数提案
  5. 福祉用具を納品し、利用者に適切か・使いやすいかを確認する
  6. 利用者と事業者の間でレンタル契約を締結
  7. 福祉用具のレンタル開始

福祉用具専門相談員は、レンタル開始後も利用者を定期的にモニタリングしています。
福祉用具が適切かどうかのチェックや、メンテナンスやアフターサービスの手配を行います。

介護保険で福祉用具をレンタルするには、ケアプランが必要です。
ケアプランがなく自分でレンタル事業者と契約を結んだ場合は、介護保険は適用となりません。

購入する場合

介護保険を利用して特定福祉用具を購入する手順は、以下のとおりです。

  1. 地域包括支援センターまたはケアマネジャーに相談する
  2. ケアマネジャーが「福祉用具サービス計画書」を作成する
  3. 特定福祉用具販売事業所で用具を購入

給付方法は次の2つですが、お住まいの市区町村によって給付方法が限定されていることがあります。

償還払い 本人は、購入時に用具費用の全額を支払う。
市町村の窓口で支給申請をすると、費用の9割(一定以上所得者の場合は8割又は7割)が介護保険から払い戻される。
受領委任払い 本人は、購入時に用具費用の1割(一定以上の所得を有する方は2割または3割)を支払う。

指定外の販売事業所や、福祉用具専門相談員から助言が受けられないインターネット販売などで購入すると、給付対象外です。全額自己負担になるので注意しましょう。

福祉用具の選び方のポイント3つ

住環境や身体状態に合っているか

福祉用具を選ぶときは、利用者の住環境や身体状態に合っているかを必ず確認しましょう。

住まいが戸建てかマンションか、また部屋の構造や設備などによって、快適に使える福祉用具は異なるからです。

たとえば、介護ベッドだけでもいろいろなメーカーが出しており、機能も違います。
どの機能が必要かは本人の身体状態によって変わるため、福祉用具を人気度や金額などで選ぶのはおすすめできません。

本人の自立をサポートできるか

福祉用具は、本人の自立を助けるものを選びましょう。
福祉用具の使用によって「できないことができるようになる」「今できていることを維持できる」が達成されることが重要だからです。

リハビリに過度な期待をしすぎず、適切に福祉用具を使用することが理想です。
また、身体機能に問題がないにもかかわらず「心配だから」という理由で福祉用具を使ってしまうと、逆に身体機能が低下する恐れもあるため、本人の状態に合わせた使い方を模索していくことが大切になります。

家族・介助者の負担を軽くできるか

福祉用具を選ぶときは、家族や介助者の負担を軽くできるかどうかもチェックしましょう。
福祉用具を使うことで、介助者に負担がかかっては本末転倒です。

一例を挙げると、ポータブルトイレは排泄の自立の維持に役立ちますが、清潔に保つため使用の都度お手入れが必要になります。そのため、介助する人の状況によっては大きな負担になることもあるでしょう。

福祉用具の使用は、本人の自立と介助者の負担軽減が目的です。
そのため、「使いやすいか」「介助者が無理なく使用できるか」も重要なポイントになります。使い勝手が悪かったり手入れが難しかったりするものは避けましょう。

福祉用具は専門家に相談しながら適切なものを選ぼう

高齢者の中には、「まだ自分でできる」と福祉用具の利用を嫌がる方もいます。
しかし、福祉用具の利用は家族の目から見て「そろそろ必要かも」と感じたときに使い始めるのがおすすめです。本当に必要になってから使い始めると、スムーズに使いこなせない可能性が高くなります。

また、適切でない福祉用具を使うと、かえって本人・家族にとって悪影響を及ぼすこともあります。福祉用具は、「身体状況」「生活環境」「介助する人の希望」などを考慮した上で選ぶ必要があるため、必ずケアマネジャーや専門家に相談しながら選びましょう。

参考:『ひとりひとりの福祉用具-福祉用具支援概論』市川洌(日本工業出版)