サイト内検索
介護のお役立ち情報
  1. トップページ
  2. 介護のお役立ち情報
  3. 親の介護、どう分担する?兄妹や家族で揉めずに「負担を分かち合う方法」

親の介護、どう分担する?兄妹や家族で揉めずに「負担を分かち合う方法」

親の介護が必要になったとき、「誰が」「どのように」担うのかは多くの家族にとって悩ましい問題です。特に兄弟姉妹がいる場合、介護をどう分担するかで意見の相違が生じることも少なくありません。この記事では、家族間で親の介護を円滑に分担するためのヒントや、よくある悩みへの対処法をご紹介します。

そもそも親の介護は誰が担うべき?

親の介護というと、「長男」「女性」「近くに住む子」などに集中しがちですが、実際にはどうなのでしょうか。介護の担い手について見ていきましょう。

厚生労働省の「2022年国民生活基礎調査」によれば、同居のケースでは、主な介護者は配偶者が最も多く約22%、次いで子どもが約16%となっています。また、子の配偶者が約5%と続いています。

全体で見ると、別居の家族が介護を担っている割合は約12%です。介護はどうしても同居家族への負担が大きくなりますが、同居・別居に関わらず、家族みんなで支え合うのが大切です。

重要なのは「ひとりで抱え込まない」ことであり、家族で分担することが介護を長く続けるためのカギとなります。

では、どのように家族間で介護を分担すればよいのでしょうか。次では具体的な方法と工夫についてご紹介します。

兄弟姉妹・家族で親の介護を分担する方法と工夫

親の介護を家族で分担するには、それぞれができることを行い、バランスよく役割分担することが重要です。

親の介護における役割分担例として、次のようなものが考えられます。

  • ケア支援:入浴介助や食事の介助など直接的なケア
  • 金銭的支援:介護費用の負担や生活費の援助
  • 情報管理:介護保険の手続きや医療情報の管理
  • 通院の付き添い:病院への送迎や医師との相談
  • 買い物や家事:日常生活のサポート
  • 緊急時の対応:急な体調変化などへの対応

上記を参考に「どういった支援が必要か」を細かく書き出して、整理してみましょう。

必要な支援を、「どう割り振るか」「交代で行うのか」を考えるための具体的な資料となり、建設的に話し合いやすくなります。

介護保険サービスや民間サービスも積極的に活用しましょう。デイサービスやショートステイ、訪問介護などを利用することで、家族の負担を軽減できます。

家族それぞれの状況に合わせた役割分担と、コミュニケーションが、長期にわたる介護を支える基盤となります。次は、具体的な家族の状況別に、介護の対処法を見ていきましょう。

家族の状況別、親の介護のよくあるケースと対処法

家族構成や生活環境によって、介護の課題は大きく変わります。ここでは、よくあるケースごとに対処法をご紹介します。

ケース1:一人っ子「親の介護」

一人っ子の場合、介護の役割を分担する兄弟姉妹がいないため、すべての責任を“ひとり”で担わなければならないという心理的プレッシャーを感じやすいものです。

このような場合は、次のような対処法が考えられます。

  • 両親が元気なうちから介護についての話し合いを持つ
  • 親族(叔父叔母、いとこなど)にも協力を仰ぐ
  • 介護保険サービスを最大限活用する
  • 地域の介護サポート体制(地域包括支援センターなど)に相談する
  • 介護休業制度など職場の支援制度を利用する

外部の支援を積極的に取り入れることが重要です。

ケース2:遠距離介護「子どもが近くに住んでいない」

仕事や家庭の事情で親元から離れて暮らしている場合、「近くにいないから何もできない」と感じがちですが、遠方からでもできることはたくさんあります。

遠距離介護の分担・対処法として、次のようなことが挙げられます。

  • 地元のケアマネジャーと密に連絡を取り合う
  • ICTを活用した見守りシステムや緊急通報システムを導入する
  • 定期的に帰省して親の状態を確認する
  • 地域の民生委員や近隣住民との関係を構築する
  • 兄弟がいる場合は、近くに住む兄弟と役割分担(経済面をサポートするなど)

特に重要なのは、地域のサポート体制を整え、密にコミュニケーションをとることです。任せっぱなしにせず、介護をサポートしてくれる方々への感謝を忘れずに、頻繁に連絡をとるようにしたいですね。

ケース3:兄弟姉妹で生活スタイル・経済状況が大きく違う場合

兄弟姉妹の間で、独身と既婚、子どもの有無、経済状況などに大きな違いがあると、介護に対する考え方や関わり方にも差が生じやすくなります。

このような状況での対処法としては、次のようなことが考えられます。

  • それぞれの状況に合わせた役割分担を行う(経済的に余裕がある人は費用負担、時間に余裕がある人は訪問など)
  • 「公平」ではなく「公正」な分担を目指す
  • 定期的な話し合いの場を設け、互いの状況を理解する
  • 負担の数値化(訪問回数や費用負担など)を試みる
  • 介護の「見える化」で貢献度を共有する

大切なのは、互いの状況を尊重し、「できること」に焦点を当てることです。比較するのではなく、「チーム」として親をサポートする意識を持ちましょう。

どのケースにおいても共通するのは、「ひとりで抱え込まない」ということです。次は、家族間のトラブルを防ぐための具体的な方法について見ていきましょう。

親の介護 "見えない不公平" を減らし兄妹・家族間トラブルを防ぐ

親の介護をきっかけに、家族関係が悪化するケースも残念ながらあります。特に問題となるのが、「見えない不公平」と呼ばれる負担の偏りです。

「見えない負担」は、時間とともに蓄積し、不満や不公平感につながります。特に介護の現場に近い家族ほど、こうした負担を感じやすい傾向にあります。

不公平感を軽減し、家族間のトラブルを防ぐためには、次のような工夫が効果的です。

介護の分担と負担を見える化し記録で残す

まず、金銭・時間・精神的負担の「見える化」が重要です。介護日誌や家計簿をつけ、誰がどのくらいの時間や費用を負担しているかを記録しましょう。介護に関わる費用は専用の口座を作り、共同で管理するのもひとつの方法です。

また、定期的な話し合いの場を設け、それぞれの状況や思いを共有することも大切です。しかし、スケジュールが合わなかったり、遠方に住んでいたりすると、頻繁に会うのは難しいものです。

そこで役立つのがデジタルツールを活用した情報共有です。

あるご家庭では、兄弟3人と配偶者も含めた「親の介護専用グループLINE」を作成し、日々の状況を共有しています。母親からの電話の内容や、通院結果、ヘルパーさんからの連絡事項などをリアルタイムで共有することで、「ほとんど1階で過ごしているみたいだけど、2階の整理をしたほうがよくないか?」「お金の問題も考えなければ」など、介護についての話し合いが自然にできるようになったそうです。

他にも、次のような活用例があります。

  • 日記アプリ:通院に付き添った人が記録し、購入物のレシートもアップロード
  • カレンダーアプリの共有:通院予定やヘルパー面談などの予定を家族全員が把握

こうしたデジタルツールを活用することで、「誰がいつ何をしたのか」「どんなサービスを利用したのか」が記録され、負担の偏りを防ぎ、スムーズな情報共有が可能になります。

介護の状況を「見える化」することで、家族一人ひとりが自分の関わり度合いを客観的に把握できます。たとえば、「同居している次男の妻に負担がかかっているな」と気づいたら、今度の連休は「次男夫婦にゆっくりしてもらうために、両親を旅行に誘ってあげよう」といった配慮につながります。

また、「自分は距離的に頻繁に行けないけれど、記録を見ると経済的に大変そうだ」とわかれば、金銭面でのサポートを増やすなど、それぞれの状況に合わせた分担の調整もしやすくなります。

介護の状況が「見える化」されることで、家族間で自然に配慮し合う雰囲気が生まれ、お互いに感謝の気持ちを伝えやすくなるのも大きなメリットです。

外部サービスを積極的に検討する

介護の負担が特定の人に集中している場合は、外部のサービスを利用してその負担を軽減することも検討しましょう。デイサービスやショートステイ、訪問介護などのサービスを利用することで、家族の負担を分散できます。

さらに、将来的には老人ホームへの入所も選択肢のひとつとして視野に入れておくことも大切です。親の状態や家族の状況によっては、老人ホームでの介護が最適な選択肢となる場合もあります。

兄弟姉妹、家族みんなで状況と情報を共有し、より良い方法や負担が過度にかからない方法を見つけていきたいですね。

まとめ

親の介護は、家族全体で取り組むべき課題です。特定の誰かに負担が集中するのではなく、それぞれができる形で協力し合うことが、親にとっても介護者にとっても良い結果をもたらします。

介護の分担においては、「公平」を追求するのではなく、それぞれの状況に応じた「公正」な分担をめざしましょう。そのためには、介護の負担を「見える化」し、定期的なコミュニケーションを通じて状況を共有することが重要です。

また、家族だけで抱え込まず、介護保険サービスや地域の支援体制を積極的に活用しましょう。専門家のサポートを得ることで、家族の負担を軽減できます。

ひとりで抱え込まない、ひとりに負担させない、家族みんなで介護と向き合っていきましょう。