耳よりだより

脳梗塞は生活習慣の改善で予防できる!冬の生活で気を付けたいこと

毎年1月20日は「血栓予防の日」。さらに、この日から1ヶ月間は「血栓予防月間」に制定されています。これは、血栓が詰まることで生じる脳梗塞や心筋梗塞で亡くなる人が、1月に多いことを受けて定められたものです。

脳梗塞は、一命を取り留めても麻痺や言語障がいなどの後遺症が現れ、日常生活に支障をきたす恐れがあります。脳梗塞になると、認知症や要介護状態になるリスクが高くなるため、日頃から予防に努めることが大切です。

今回は、脳梗塞の予防法や冬の生活で気をつけたいことについてご紹介します。

脳梗塞の基礎知識

まずは、脳梗塞とはどのような病気なのか理解しましょう。

なぜ脳梗塞は冬に起こりやすい?

脳卒中の7割を占める脳梗塞は、脳の血管が詰まったり狭くなったりして起こる病気です。

「冬は脳梗塞(脳卒中)に注意」といわれるのは、冬は寒暖の差が激しく、血管が詰まりやすくなるからです。寒さで血管が収縮したり、体を温めようと血圧が一気に上昇したりすることが、脳梗塞の発症につながります。

しかし、脳梗塞は冬だけでなく、以下のタイミングでも起こりやすいので気を付けましょう。

▼脳梗塞が起こりやすいタイミング
  • 夏の猛暑日
  • 起床から2時間以内
  • 睡眠中

このように脳梗塞は、大量の汗をかくなど、体内の水分が不足した時に起こりやすくなります。

脳梗塞を引き起こす原因

脳梗塞を引き起こす原因は、以下の3つに分類できます。

健康状態
(持病)
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 不整脈
生活習慣
  • 食生活の乱れ
  • ストレス
  • 運動不足
生活環境
  • 寒暖差の激しい場所

そのため、以下に該当する人は脳梗塞になりやすいので注意が必要です。

▼脳梗塞になりやすい人
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • コレステロール値が高い
  • 不整脈
  • BMI30以上(肥満・太り気味)
  • 喫煙習慣がある
  • 親や兄弟に脳梗塞になった人がいる
  • 食事の栄養バランスが悪い
  • アルコールをたくさん飲む
  • ストレスをためやすい

高齢者にとって脳梗塞の予防が重要な理由

高齢者にとって脳梗塞予防が重要な理由は、脳梗塞が「寝たきり状態」や「認知症」の原因になるからです。

実際、脳梗塞が原因で要介護認定を受けたという高齢者は少なくありません。また、脳の血管が詰まることで徐々に脳の機能が低下する脳血管性認知症は、認知症患者の約20%を占めています。

脳梗塞は発症すると生活に支障をきたす後遺症のリスクがあります。いつまでも自分らしく暮らすには、脳梗塞を予防することが非常に重要になります。

脳梗塞を予防する9つのポイント

では、脳梗塞を予防するには具体的にどうすればいいのでしょうか。
ここでは、脳梗塞を予防する9つのポイントをご紹介します。

1.毎日血圧を測定する

高血圧は脳梗塞のリスクになりますが、血圧は高くても症状にあらわれません。
そのため、毎日決まった時間に血圧を測る習慣をつけるといいでしょう。

安静時に測定して、上の血圧が140㎜Hg以上、下の血圧が90㎜Hg以上は要注意です。
上の血圧・下の血圧のどちらかでも毎回超えるようであれば、医師に相談しましょう。

毎日血圧を測定する習慣をつけると、高血圧を予防する意識が働きます。
また、病院で薬を処方されている場合も、毎日血圧を測定することで、飲んでいる薬が効いているか確認できるので効果的です。

2.持病の治療を行う

脳梗塞の原因となる持病(高血圧・糖尿病・脂質異常症・不整脈)のある人は、きちんと治療を受けましょう。持病を放置しておくと、脳梗塞を発症するリスクが高くなるので、とても危険だからです。

なかには、「薬を飲むことに抵抗がある」「今の生活に支障がないので治療を受けたくない」と思う人もいるかもしれません。

しかし、治療を受けずに脳梗塞を発症すると、その後の生活が一変します。
後悔しないためにも、持病はきちんと治療することが大切です。

3.バランスの良い食生活

脳梗塞を予防するには、バランスの良い食生活を心がけましょう。偏った食事は脳梗塞の原因となる糖尿病や高血圧につながります。

できるだけ「主食・主菜・副菜」を摂るようにするといいでしょう。外食でも、ファーストフードやラーメン店ばかりだと、どうしても糖質や脂質、塩分が多くなります。脳梗塞を防ぐには、時には和食を選ぶ、サラダを追加するなど工夫をしましょう。

▼脳梗塞になりにくい食生活のポイント
  • 食べすぎを抑える
  • 「早食い」「ながら食い」は改善する
  • 塩分を摂りすぎない
  • 野菜や海藻、食物繊維を積極的に摂る

4.禁煙する

タバコを吸っている人は禁煙しましょう。タバコを吸わない人と比べると、喫煙者が脳梗塞を発症する確率や死亡率は高くなっているからです。

タバコに含まれるニコチンやタールは、血管を収縮させるため一気に血圧を上昇させます。喫煙量が多いほど、リスクは大きくなりますが、本数を減らす「節煙」や銘柄変更ではなく禁煙をおすすめします。

自分の力で禁煙が難しい場合は、主治医に相談の上、病院で禁煙治療を受けるといいでしょう。

5.飲酒は適量を守る

お酒は適量を守って飲みましょう。
適切な量のアルコールは体に良い働きをもたらしますが、大量飲酒は脳梗塞の原因になるからです。

厚生労働省の健康日本21では、1日平均純アルコール約20g程度を「節度ある飲酒量」としています。

アルコールの種類 アルコール度数 適量の目安(量)
ビール 5% ロング缶1本(500ml)
清酒 15% 1合(180ml)
ウイスキー・ブランデー 43% ダブル1杯(60ml)
焼酎(35度) 35% グラス半分(100ml)
ワイン 12% グラス2杯弱(200ml)

ただし、お酒に強い人・弱い人がいるように、アルコール耐性はさまざまです。
お酒が強い人は、上記の数値内でアルコールを楽しみましょう。お酒が弱い人は、上記の目安にとらわれず、無理のない範囲で嗜むといいでしょう。

6.適度に運動する

適度な運動は、脳梗塞の予防に効果的です。
体を動かすことは、肥満解消だけでなく、糖尿病や高血圧の予防や改善に有効です。

特別な運動を新たに始めようとすると挫折しやすくなるので、ご自身が無理なく続けられる運動を選びましょう。

▼脳梗塞の予防におすすめの運動
  • ウォーキング(散歩)
  • ヨガ
  • ストレッチ
  • 水泳
  • ラジオ体操

運動に苦手意識がある人は、「バスを利用せずに歩く」「エレベーターを使わずに階段を使う」などでもいいでしょう。

7.こまめな水分摂取を心がける

水分摂取はこまめに行いましょう。
体内の水分が不足すると、血液がドロドロになりやすいため、脳梗塞を起こすリスクが高くなるからです。

特に高齢者の場合は、加齢とともにのどの渇きを感じにくくなっています。のどの渇きを感じる前に、こまめに水分を取るようにすると安心です。

▼水分摂取のポイント
  • 水分補給は、「水」「白湯」「麦茶」がおすすめ
  • のどの渇きを感じる前に飲む
  • 就寝前に1杯、起床後に「1杯の水」を飲む

8.ストレスをためこまない

脳梗塞の発症には、ストレスの有無も関係しています。
ストレスがかかった状態が続くと、自律神経が乱れ、血圧や心拍などに影響があるとされているからです。

生きていく上でストレスをゼロにすることはできません。ストレスはゼロにするのではなく、ためこまないことを目指しましょう。

▼ストレスをためこまないコツ
  • 頑張りすぎない
  • 好きなことを楽しむ
  • 無理をしない
  • 睡眠や休息をしっかりとる
  • 自宅を快適な環境にする(気温、音、明るさなど)

9.部屋全体を暖める

脳梗塞の予防には、血圧を安定させることが極めて重要です。ある調査では、こたつやホットカーペットのみを使用している高齢者に比べ、部屋全体が暖まっているなかで生活している高齢者のほうが、血圧が安定しやすいという結果が得られたそうです。

それには暖房器具などで部屋を暖めるのはもちろん、熱を逃がさないような工夫も必要。
特に気密性の低い木造家屋にお住まいの場合は、隙間テープや断熱シートを利用するなど対策を講じましょう。暖房時にカーテンを閉めることでも、断熱効果が高まります。

特に冬は「ヒートショック」に注意!

寒い時期に特に気を付けたいのが、「ヒートショック」です。
ヒートショックとは、急激な気温変化で血圧が大きく変動し、体に変調をきたすことを指します。

ヒートショックは脳梗塞を引き起こすだけでなく、突然死を招くことがあるので大変危険です。最後に、ヒートショックを防ぐ6つのポイントをご紹介します。

1.お風呂場と脱衣所を暖める

お風呂場と脱衣所に温度差が出ないように、暖房器具などで暖めましょう。
お風呂場に暖房器具がない場合は、シャワーで浴槽にお湯をはると、お風呂場全体が暖かくなります。

2.お湯の温度は41度以下、湯船につかるのは10分以内にする

お湯の温度は、低めの41度以下に設定しましょう。湯船につかった時に、一気に血圧が下がるのを防ぐためです。

また、湯船につかる時間は10分以内と短めにすると、体温の上昇や血圧の急激な上下変動を予防できます。

3.かけ湯をしてから湯船に入る

湯船につかる前に、シャワーなどでお湯に体を慣らしましょう。かけ湯をすることで、血圧の急上昇を防げるからです。

お湯は手や足からかけ、心臓に近い部分は最後にかけるのがポイントです。

4.入浴前後に水分を摂る

入浴前後にコップ1杯の水を飲みましょう。
入浴で汗をかくと体内の水分が減り、血栓ができやすくなるのを防ぎます。

5.「食後すぐ」「飲酒後」「服薬後」に入浴しない

高齢者は、「食後すぐ」「飲酒後」「服薬後」の入浴はやめましょう。いずれの場合も、事故につながる可能性があるからです。

高齢者は、食後に血圧が下がりすぎる「食後低血圧」により、失神する可能性があります。

6.冬はトイレを暖かくする

冬はトイレに暖房器具を入れるなどして暖かくしましょう。ヒートショックはトイレでも起こるからです。

トイレで排便する時、いきむと血圧が上がり、排便後は急激に血圧が低下します。その際に、室内とトイレに気温差があると、ヒートショックを起こしやすくなります。

脳梗塞の予防に「生活習慣の改善」を

高齢者にとって、脳梗塞は非常に怖い病気ですが、予防は難しいものではありません。「水をこまめに飲む」「毎日血圧を測る」など、できることから始めてみましょう。

日々のちょっとした努力の積み重ねが習慣になると、脳梗塞予防の効果は高まります。健康寿命を伸ばすためにも、これまでの生活を少し見直してみるといいでしょう。