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ご家族が認知症になる前に… 介護のプロが教える! 認知症介護の心構え

11月11日は介護の日。高齢者や障がい者に対する介護に関し、国民の啓発を重点的に実施するため、厚生労働省が2008年に制定しました。この日が介護の日になった理由は、「いい日、いい日」という語呂合わせに由来します。
医療技術の進歩などにより平均寿命は著しく伸び、日本は世界一の長寿国の座を維持しています。でも喜んでばかりはいられません。厚生労働省のデータでは、男女とも健康寿命は平均寿命を10歳以上も下回ることがわかっています。これは、それだけの期間、介護が必要になることを意味しています。
誰にも平等に訪れる“老い”。たとえばあなたの大切なご家族にも、近い将来、介護が必要になる可能性を否定できません。そんな事態に慌てることのないよう、早めに備えておくことが大切です。
そこで、今回は初めて介護に直面する際の心構えやポイントについて、最も戸惑いが生じやすい「認知症介護」に重点を置きながら、ALSOKジョイライフの介護リーダー、恩田高尋がお話します。


 

ご家族の正しい対応が、認知症の進行を緩やかにします(お話:ALSOKジョイライフ 介護リーダー 恩田高尋)

■忘れたことを責めすぎない
「あなたのお父さん(お母さん)は認知症です」。そう医師に告げられたら…誰しも絶望的な気持ちになってしまうでしょう。認知症は高齢になるほど発症の可能性が高まる病気。残念ながらいまのところ治らない病気といわれています。ただ初期の適切な対応により、認知症の進行を緩やかにすることが可能です。それにはあらかじめご家族が正しい知識を持っておく必要があります。
たとえばお父さんお母さんが約束を忘れてしまったとき。加齢による“もの忘れ”なら、内容は忘れても、約束したことは覚えているものです。それが、約束したこと自体、忘れているなら、認知症の疑いがあるかもしれません。
気をつけたいのは、このときご家族が咎めすぎないことです。お父さんお母さんに「しっかりして欲しい」という思いから、「なぜ忘れるの!?」と責めてしまいがちですが、これがご本人にとって大きなストレスとなります。なぜなら初期の認知症では、患者さん自身、強い不安や焦りを感じているからです。そこに家族からの叱責が加わると、ご本人の混乱に拍車がかかり、ひいては症状を加速させてしまいます。親御さんがもの忘れをしたとき、それが認知症によるものかもしれないとの可能性を視野に入れご対応いただきたいと思います。

■こんな行動がみられたら、すぐに病院へ
もの忘れが認知症によるものかどうかは、行動からもわかります。認知症になると、たとえば通帳を冷蔵庫にしまう…など、大事なものを意外な場所にしまっておくようになったりします。また、お金の計算ができなくなるのも認知症の特徴。細かいお金が出せなくなり、何でも大きいお金を出してしまうので、小銭がどんどん貯まってしまいます。そういう行動が見られたら、できるだけ早く医療機関に受診してください。
ただ、単刀直入に「行きましょう」といっても、お父さんお母さんは応じてくれないかもしれません。そこは少し時間をかけ、コミュニケーションを取りながら進めましょう。ポイントは「家族が心配している」というスタンスでの声かけ。認知症という言葉は使わず、「何かあったら大変だから」「私が安心したいから」といういい方をすれば、「家族がそこまでいうのなら」と応じていただけることが多いようです。そして、認知症と診断された場合も、悲観するのではなく「早めに発見できたから進行を遅らせられる」といってあげましょう。実際そうした安心感こそが、進行を緩やかにする最善策といえます。

■症状の安定のために、検討したい介護施設への入所
早めの発見で進行を緩やかにできても、認知症になると次第にできなくなることが増え、ご本人も困惑されることが多くなるでしょう。そんなときも決して否定的な態度は取らず接することが大切です。重要なのは尊厳を重んじた対応です。いつも家族が理解してくれるという安心感は、ご家族の顔がわからないほど症状が進んでも、いつまでも残り、それがご本人の気持ちの安定につながるのです。
それでも症状が進行すると、介護するご家族の負担も大きくなるでしょう。そんなときは、無理せず介護の専門家の力を借りていただきたいと思います。ご家族だけで介護を続けていくと、精神的にも肉体的にも疲弊し、家族の雰囲気が悪くなるだけでなく、ご本人の症状が悪化する恐れもあります。
とはいえ、どのタイミングで入所を検討すべきか悩まれるかもしれません。たとえば睡眠不足が続くなど、介護する人の健康や生活に支障が出る状況になれば検討を急ぐべきでしょう。介護のために仕事を断念し、経済面に影響が出てしまう…などは危機的状況だといえます。
私が数々の現場経験を通じ感じることは、認知症が進みきった状態で入所されるより、早めに入所された方の方が、安定した状態が持続されるケースが多いということです。ご本人はもちろん、ご家族もストレスから解放される…それが介護施設の入所により可能になると思われます。もちろん、どういう施設がいいのか、迷われたり不安に思われたりすることも多いでしょう。そんなときは、まず施設に足を運んでみてください。声かけの仕方が事務的でないか、会話が多いかどうか、入居者の方に笑顔があるかどうか。さらに働くスタッフがイキイキしているか…といった点にも注目しながら見学すると、そこがご本人に適切な場所かどうかが見えてくるでしょう。


 

介護はゴールの見えないマラソンのようなもの、といわれます。その現実をご家族だけで受け止めがんばりすぎるのではなく、いろんなサービスを利用しながら、余裕を持って臨む。それがご家族にはもちろん、介護を受けるご本人にとってもいい状態につながるとことを、ぜひ知っていただきたいと思います。