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夏の生活で気をつけたい「サルコペニア」

例年より早く梅雨がやってきた今夏は、平年より気温が高くなり「酷暑」になると予想されています。
ご高齢者の夏の健康を守るには、脱水や熱中症を防ぐための水分補給、そして暑さに負けない体力を維持するための食事が重要です。

今回は、食習慣が大きな影響を与える話題のキーワード「サルコペニア」についてご紹介します。


 

サルコぺニアとは

 

「サルコペニア」とは、加齢や生活習慣などの影響によって筋肉量が落ち、全身の筋力低下が起こる状態を指します。

Sarx(筋肉)とPenia(減少)というギリシャ語を組み合わせた造語で、1989年ごろにアメリカで提唱された比較的新しい概念です。

 

具体的には、筋肉量が減少することで起こる

・握力や下肢筋・体幹筋など「全身の筋力の低下」

・歩くスピードが遅くなる、杖や手すりが必要になるなどの「身体機能の低下」

を意味しています。

 

 

人の筋肉量は30歳をピークにして40歳を境に徐々に減少していく傾向があり、60歳を超えるとその減少率は加速すると言われています。そのため、サルコペニアやその予備群は65歳以上の高齢者に多く、特に75歳以上になると急増します。

 

人の体内では、筋肉が作られたり分解されたりを繰り返しています。作られる筋肉よりも分解される筋肉が多くなってしまうと、バランスが崩れ筋肉量が減ってしまいます。

高齢者の場合、たんぱく質の摂取や運動量の減少などによって作られる筋肉が減少し、分解される筋肉を補いきれない状態となります。

 

サルコペニアになると、
「歩く速度が低下する」
「転倒・骨折のリスクが増加する」
「着替えや入浴などの日常生活の動作が困難になる」
「死亡率が上昇する」
など、さまざまな影響が出てきます。

 

また、筋肉量が減少することで運動量も減少し、そのことによって食欲が低下して低栄養状態に陥ることを「サルコぺニアの悪循環」といい、サルコぺニアの予防や改善にはこの悪循環を断ち切ることが重要となります。

 


 

サルコぺニアの自己チェック

 

「歩くのが遅くなった(横断歩道を渡りきれない)」
「手すりにつかまらないと階段を上がれない」
「ペットボトルのキャップを開けにくくなった」
といった場合はサルコペニアが疑われます。

 

サルコペニアの診断は、筋肉量・歩行速度・握力を測定して行います。

筋肉量の測定は専門の医療機関でないとできませんが、日本人の高齢者に合ったサルコペニアの簡易基準案も作成されており、自分でチェックすることもできます。

 

この簡易基準では身長、体重、握力計、メジャー、ストップウォッチがあれば測定可能であり、診断が比較的容易に行えるという利点があります。

 

65歳以上の高齢者で
①歩行速度が1m/秒未満(横断歩道を青信号のうちに渡り切ることのできる歩行速度とされています)、もしくは握力が男性25kg未満、女性20kg未満である
②さらにBMI値が18.5未満、もしくは下腿囲(ふくらはぎの最も膨らんだ部分)が30cm未満
の場合にサルコペニアと診断されます。

 


 

サルコぺニアを予防するには

 

サルコペニアの予防は特別難しいことはありません。

サルコペニアにならないための予防方法は、主に3つです。

 

○しっかりと栄養を摂取する

栄養摂取は、特に筋肉のもととなるたんぱく質の摂取が大切です。

たんぱく質が多く含まれる食材は、肉や魚、大豆、卵などです。必要なたんぱく質の量も目安は「手のひら1枚分」と言われています。

高齢になると、お肉や魚などたんぱく質をはじめ、食事全体の量が減り低栄養状態になる方も少なくありません。たんぱく質はもちろん、野菜やごはんなどもきちんとバランスよく食べるようにしましょう。

 

○体重を管理する

肥満が原因で膝関節に負担がかかり、活動量が低下してサルコペニアになってしまうといわれています。また、サルコペニアと肥満が合併した「サルコペニア肥満(筋肉量が低下し脂肪の量が多い状態)」という病態も問題となってきています。

サルコぺニアは筋肉量の減少や筋力の低下を指しますので、サルコペニア肥満は“外見上はサルコぺニアに当たらないように見えるが、筋肉量が低下し脂肪ばかりが多くなっている状態”といえます。

もちろん低栄養による基礎代謝量の低下もサルコぺニアを進行させますので、肥満だけではなく痩せすぎないように管理することも必要です。

 

○運動をする

運動は、筋力トレーニングを中心に行うようにしましょう。

サルコペニアでは、主に下肢の筋肉が減少していきます。下肢の筋肉は、スクワットやもも上げ、つま先立ちなどにより鍛えることができます。週に3~5日程度を目安に無理のない範囲で行ってみましょう。

また、ウォーキングを行う場合も、歩く速さを早める、ウォーキングコースに坂を加える、など少しの工夫で、筋肉量のアップにつながります。

 

睡眠不足、閉じこもり、運動不足、不規則な食生活、強いストレス、喫煙、過度の飲酒などの生活習慣は、身体活動性の低下や低栄養、生活習慣病などの慢性疾患を引き起こし、サルコペニアの要因をもたらします。

毎日の生活のリズムを整え、散歩や体操などの運動を習慣づけること、仕事や趣味を持つことや地域活動・ボランティアなどに積極的に参加し、他者とのコミュニケーションや社会とのつながりを持つこと、慢性疾患を管理して悪化を予防することで心身の健康維持を図ることが大切です。

 


 

誰もが加齢によって、筋肉量は落ちていきます。しかし、危機感を持って対策をとるかとらないかで、筋肉量の落ち方は大きく変わります。
加齢に伴い運動量が減った、食事量が減ったという方は、今一度普段の生活を見直してみましょう。