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高齢者の命を守る熱中症対策・対処法とは?家族ができる予防法も紹介

夏になると心配になるのが熱中症です。
特に高齢者は熱中症になりやすく、重症化しやすい傾向があります。高齢者の熱中症は日中の炎天下だけでなく、室内にいるときや夜間に多く発生します。そこで大切になるのが、熱中症対策・熱中症予防の知識です。

正しい知識があれば、熱中症になりにくいだけでなく、仮に熱中症になりかけても命を守ることができます。
今回は、高齢者の命を守るための熱中症対策について解説します。

高齢者が熱中症になりやすい理由

高齢者は、ほかの年代の人に比べて熱中症になりやすいといわれています。
その理由は、加齢による体内機能の変化にあります。

加齢による変化

  • 体内水分量が減少する
  • 「暑い」と感じにくくなる
  • のどの渇きを感じにくくなる
  • 汗をかきにくくなる
  • 体温調節が難しくなる

また、高齢者は、生活スタイルを変えることに抵抗を感じたり、我慢したりする傾向があります。
これまでの経験から、「これくらい平気」「電気代がもったいない」などとエアコンを使いたがらないという話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
高齢者は環境・体調の変化に反応しにくいため、熱中症にかかりやすくなります。

注意!高齢者は熱中症が重症化しやすい

高齢者は熱中症が重症化しやすいので大変危険です。

熱中症になりかけている自覚症状がないため、室温を下げる・水分補給をするなどの、適切な対処ができません。
「暑い」「のどが渇いた」と感じたときには、症状が進んでいることがあります。


厚生労働省の人口動態統計(2020年)によると、熱中症で亡くなられる方のうち、86.1%が65歳以上の方となっています。高齢者の熱中症は命にかかわるので、早めの対処や予防

【シーン別】高齢者向け熱中症対策

高齢者の命を守るためには、熱中症対策をしっかり実践することが重要です。

ここでは、シーン別の熱中症対策についてご紹介します。

室内

  • 決まったタイミングで水分補給をする

  • エアコンを活用する

  • 温湿度計を置く

  • カーテンで直射日光を遮る

入浴

  • 入浴前に必ず水分をとる

  • 夏の湯温は39℃・入浴は10分程度

就寝時

  • 就寝前と起床後に水分補給をする

  • 朝までエアコンをつけておく

外出時

  • 天気予報や熱中症情報を確認する

  • 通気性の良い服を着る

  • 日傘や帽子を使う

  • 無理せず、こまめに休憩をとる

  • 水分と塩分を補給する

【室内】決まったタイミングで水分補給をする

高齢者は「のどが渇いてから水を飲む」よりも、決まったタイミングで水分補給するのがおすすめです。

1日あたりの必要な水分量は1.2リットルとされていることから、本人が忘れにくいタイミングで、コップ1杯の水を6回飲むといいでしょう。
ただし、持病がある方は、水分摂取量について主治医に確認の上、実践してください。

水分補給のタイミング

  • 起床したとき
  • 食事のとき
  • 入浴の前後
  • 就寝前

水分補給には、水や麦茶を選びましょう。
ビールやコーヒーなどは、水分補給になりません。

アルコールやカフェインが入っている飲み物は、利尿作用があるため、飲んだ量以上の水分を排出するからです。特にアルコールは、脱水症状になりやすいので、注意しましょう。

【室内】エアコンを活用する

エアコンを使って、涼しい環境を保つことが大切です。
エアコンの設定は、室温28℃以下、湿度70%以下が目安です。エアコンの風が直接あたらないように設定してください。

高齢者の中には、エアコンを使うことに抵抗がある人もいるでしょう。
しかし、東京都監察医務院の「令和3年夏の熱中症死亡者」調査では、熱中症で亡くなった人の94%が「エアコンを使っていない」ことが明らかになっています。

エアコン設置あり エアコン設置なし
使用あり 使用なし
5.9% 76.5% 17.6%
エアコンを使わないと熱中症で亡くなるリスクが高いことを説明し、活用を促しましょう。

【室内】温湿度計を置く

室温や湿度は体感では分かりにくいので、温湿度計を置きましょう。
室温や湿度が目安の数値を上回ったら、すぐにエアコンをつけることが重要です。

最近では、ブザーの鳴る熱中症計も販売されています。こうした道具を上手に活用しながら室温保持に努めましょう。

【室内】カーテンで直射日光を遮る

強い日差しが室内に直接入ってくると、室温が高くなります。
カーテンやすだれを使い、直射日光を遮る工夫をするといいでしょう。

熱を遮る効果が高い「遮熱カーテン」や「遮光カーテン」を活用すると、カーテンを閉めるだけで熱中症予防につながります。

【入浴時】入浴前後に、必ず水分をとる

お風呂に入ると、想像以上に体内の水分が奪われます。
脱水症状は熱中症を引き起こすので、入浴前後に必ず水分をとりましょう。

入浴の15〜30分間前と入浴後に、コップ1杯の水を飲むと、入浴時の熱中症を防ぐことができます。

【入浴時】夏の湯温は39℃・入浴は10分程度

夏は、お風呂の温度を39℃にするのが、おすすめです。
少しぬるいと感じる温度ですが、温浴効果は十分得られます。

また、体への負担を減らすために、湯船につかるのは10分程度にしましょう。

【就寝時】就寝前と起床後に水分補給をする

人間は寝ているときに汗をかき、水分を失います。
そのため、就寝前と起床後にコップ1杯の水を飲んで水分を補給しましょう。
トイレが心配な人は、就寝の1〜3時間前にコップ1杯の水を飲むといいでしょう。

【就寝時】朝までエアコンをつけておく

暑い日や熱帯夜が予想される日は、朝までエアコンを使用しましょう。
就寝中の熱中症を防ぐことはもちろん、涼しい環境で眠ることで、睡眠の質が上がるからです。睡眠の質が上がると、疲れが取れやすくなり、熱中症の予防につながります。

高齢者の中には、就寝中にエアコンを使うとのどが痛くなったり、体がだるくなったりする人もいます。そのような場合は、以下を試してみてください。

  • エアコンの設定温度を高めにする
  • エアコンの風向きを調整する
  • タイマー機能を活用する

【外出時】天気予報や熱中症情報を確認する

外出する前は、天気予報や熱中症情報を確認し、暑い時間帯の外出は避けましょう。

どうしても外出しなければいけないときは、無理をしないようにして、こまめに休憩してください。

【外出時】通気性の良い服を着る

服装は、熱がこもらないように、通気性の良い服を着ましょう。
袖口や襟が広く、ゆったりとした服は、服と体の間に風が入りやすいのでおすすめです。

季節に合わない服を着ると、熱中症の危険があります。
本人が選びやすいように、季節に合わない服は片づけるようにするといいでしょう。

【外出時】日傘や帽子を使う

日傘や帽子を使って、直射日光に当たらないようにしましょう。
日傘や帽子は、日陰と同じ役割をします。外出時は、日差しを避けることが熱中症を防ぐカギです。

【外出時】無理せず、こまめに休憩をとる

無理せず、こまめに休憩をとりましょう。
「疲れたかな」「具合が悪いかもしれない」と感じたら、日陰で腰を下ろして休みましょう。日陰では、帽子を脱いで汗の蒸発を促すと、体が楽になります。

【外出時】水分と塩分を補給する

外出中は、水分だけでなく、塩分も補給するように心がけましょう。
経口補水液やスポーツドリンクのほか、塩分を補給できる飴やタブレットもあります。
タブレットは唾液で溶けるため、高齢者でも安心です。

家族ができる高齢者の熱中症予防

高齢者は熱中症に気づきにくいため、家族が熱中症の予防に取り組むことが大切です。
家族ができる高齢者の熱中症予防をチェックリストにしてまとめました。
本人の体調

  • 元気はあるか

  • 食欲はあるか

  • 熱はないか

  • 口の中が乾いていないか

  • 脈が速くないか

  • 尿は出ているか

  • しっかり眠れているか

  • 水やお茶を飲んでいるか

  • 衣服・肌着は適切か

室内の環境

  • 部屋の換気を行っているか

  • 部屋の温度が適切か

  • エアコン・扇風機を使っているか

冒頭でも触れたように、高齢者の熱中症は家の中で発生することが多いのが特徴です。
家の中で起こる熱中症は、ゆっくりと時間をかけて症状が悪化する危険性があります。

そのため、家族や周囲の人が「いつもと違う様子ではないか」をチェックすることが重要になります。

家族と別居または家族が不在時の場合は、身近な人の協力を得るほか、介護保険サービスを活用するなど、できる限り本人を見守れる環境を作りましょう。

熱中症の症状と対処法

熱中症の症状は、軽症・中等症・重症に分類されます。
軽症

  • 意識がはっきりしている

  • めまい

  • 立ちくらみ

  • 気分が悪い

  • 筋肉がつる

中等症

  • 意識が何となくおかしい

  • 吐き気がする・吐く

  • 頭痛

  • 体がだるい

重症

  • 意識がない

  • 呼びかけに対する返事がおかしい

  • 全身のけいれん

  • 体が熱い

  • まっすぐ歩けない

熱中症が疑われる場合、症状によって対処法が異なります。
最後に、意識がない場合と意識がある場合の対処法をお伝えします。

意識がない場合

以下に該当する場合は、すぐに救急車を呼びましょう。

  • 意識がない
  • 反応が鈍い
  • 言動がおかしい

涼しい場所に移動させ、服やベルトをゆるめて、楽な姿勢にします。
救急車が到着するまでの間、冷剤や水などで、首や脇の下、太ももの付け根を冷やすといいでしょう。

意識がない場合は、飲み物を飲ませると誤嚥(ごえん)の危険があります。飲み物を飲ませるのは止めましょう。

意識がある場合

涼しい場所に移動させ、服やベルトをゆるめて、体を冷やしましょう。
上体を起こした状態で、水分と塩分の補給を促します。自分で水分が飲める場合は、そのまま安静にして、休憩をとれば大丈夫でしょう。

しかし、自分で水分が飲めなかったり、休憩しても体調が戻らなかったりする場合は、医療機関の受診が必要です。

心配なときは、かかりつけ医や【#7119】に相談する

高齢者の熱中症は気づきにくく、既往症によっては急変の恐れもあるため、心配なときはかかりつけ医に相談するといいでしょう。

かかりつけ医への相談が難しい場合は、救急安心センター事業【#7119】に電話することをおすすめします。医師や看護師などの専門家に電話で相談できるからです。
【#7119】では、症状に応じた対処法や受診可能な病院の案内が受けられます。

高齢者を熱中症から守るには、周囲の配慮が重要

高齢者を熱中症から守るには、家族や周囲の配慮が不可欠です。
熱中症は対応が遅れると、最悪の場合、死に至ることもあります。

本人が「これくらい大丈夫」「大げさだ」と言っても、熱中症にならないよう、家族が環境を整えるようにできると安全です。同時に、熱中症の危険性や熱中症対策の重要性を伝えながら、本人に理解してもらえるといいでしょう。