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高齢者のためのリハビリ基礎知識|リハビリの種類や必要性・注意点

年齢を重ねると、体力が衰えて病気やケガをしやすくなり、これをきっかけに自立した生活が難しくなることがあります。

自立した生活が困難になると、意欲や認知機能が低下し、寝たきりになるケースも少なくありません。

そうした状態にならないためには、適切なリハビリで身体機能の維持・改善を図ることが大切です。

この記事では、高齢者向けのリハビリについて基礎知識から注意点まで詳しく解説します。
介護保険で受けられるリハビリも紹介しているので、施設選びの参考にしてください。

1.リハビリの基礎知識

まずは、リハビリとは何か、基本となる部分をおさえておきましょう。

1-1.リハビリとは

リハビリとは、リハビリテーション(Rehabilitation)の略で、re(再び)とhabilitation(獲得する)からなる言葉です。

リハビリは「その人が自分らしく、人間らしく生きるために、一度失った能力を回復する」活動を指します。ケガや病気をした際に行うイメージが強いですが、高齢者の場合は、機能の維持のためにも行われます。

1-2.高齢者がリハビリを行う目的

高齢者がリハビリを行う目的は、主に以下の3つです。

  1. 病気やケガなどによって低下した機能を回復させる(元の状態に近づける)
  2. 運動機能(身体機能)の向上
  3. 自立した生活を送れるようにする

高齢になると、病気やケガなどにかかわらず運動機能は低下するものです。筋力や関節可動域の低下、柔軟性や肺活量が衰えることが原因と考えられます。

運動機能が低下すると、周囲のサポートが必要な場面が増えます。一般的に、今まで自分ができていたことができなくなると、生活に対する満足度は下がります。リハビリを行うことで運動機能を維持・向上できると、自分でできることが増えて、自立した生活を送れるようになります。

またリハビリは、高齢者特有の病気や要介護状態の予防となり、身体機能そのものの向上につながります。

1-3.高齢者に該当するリハビリ対象の疾患

リハビリの対象となる疾患の中で、高齢者に該当するものはたくさんあります。

リハビリテーション名 対象患者(一例)
脳血管疾患等リハビリテーション
  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • くも膜下出血
  • パーキンソン病
運動器リハビリテーション
  • 上・下肢の複合損傷
  • 脊髄損傷
  • 関節の変形・損傷
  • 筋肉の機能低下
呼吸器リハビリテーション
  • 肺炎
  • 肺がん
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 胸部外傷
心大血管疾患リハビリテーション
  • 急性心筋梗塞
  • 慢性心不全
  • 狭心症発作
  • 呼吸循環機能が著しく低下している人
廃用症候群リハビリテーション
  • 急性疾患等(治療の有無を問わない。)に伴う安静による廃用症候群

出典:リハビリテーションと医療保険制度(診療報酬制度)より筆者作成

原則として、リハビリは医師の指示に基づいて行われます。
リハビリは認可された医療機関や施設でしか受けられないので注意しましょう。

2.リハビリの種類

リハビリにはさまざまな種類があり、リハビリを受ける人の状態によっても内容は変わってきます。

主なリハビリは次のようなものがあります。

2-1.理学療法リハビリ

理学療法リハビリは、理学療法士(PT)によって運動機能を回復させる目的で行われます。

立つ、歩く、座るなどの日常生活で必要な基本動作能力の維持や回復のために、筋力や関節の動きを保つなどの訓練に取り組みます。

理学療法リハビリは、理学療法士の手技のほか、専用の機器を使うこともあります。また、杖や歩行器具、靴が適切に機能しているかなどの調整も行います。

<行われる訓練例>

  • 関節の動きを維持する訓練
  • 日常生活動作に必要な筋力の増強訓練
  • 筋肉の耐久性や持久性を保つ訓練
  • 歩行訓練・移動訓練・移乗訓練など

2-2.作業療法リハビリ

作業療法リハビリは、作業療法士(OT)によって日常生活に必要な機能回復を図る目的で行われます。

歩行、着替え、入浴、食事など日常的な作業を支援することで、体のさまざまな機能の維持・回復を目指します。

作業療法リハビリでは、切り絵や貼り絵などの作品を作ったり、レクリエーションをしたりと、高齢者が興味を持てるような作業を取り入れています。

<行われる訓練例>

  • 食事動作、更衣動作、トイレ動作、移動動作など日常生活の応用動作
  • 集団での作品づくりや作業 
  • 集団でのレクリエーションや体操など
  • 歩行訓練・移動訓練・移乗訓練など

2-3.言語療法リハビリ

話す・聞くといった機能に障がいがある人に対し、言語聴覚士(ST)が言語訓練などを行いコミュニケーション能力の改善を目指します。

また、噛めない・飲み込めないといった人には嚥下訓練を行うなど、より安全に楽しんで食事ができるよう援助します。

<行われる訓練例>

  • 失語症、構音障害(※)などでうまくしゃべれない方への言語訓練
  • 噛めない、飲み込めない等に対する嚥下訓練
  • 食事前の首周りの体操・発声練習など

2-4.パワーリハビリ

トレーニングマシンを使った軽度な運動プログラムで、体の使っていない筋肉を刺激し、運動機能を維持・向上させます。

高齢者でも無理なく行える運動で、老化や障がいによる運動能力の低下を防止したり、認知症、パーキンソン病、脳卒中などの予防・症状軽減も期待できます。

2-5.生活リハビリ

寝たきりになるのを予防し、日常生活の動作を問題なく行えるようにするためのリハビリで、介護施設では主に介護士などが行います。

腕・足などの機能を維持・回復させ、日常生活が一人で行えるようにすることが目的です。

3.医療保険と介護保険のリハビリの違い

リハビリを受けるには、医療保険と介護保険のいずれかの制度を利用します。2つの保険を併用することはできません。

医療保険のリハビリは、主に病気やケガから回復を促すために行われます。

一方で介護保険は、医療機関の退院後やQOL改善を目的に行われます。

医療保険と介護保険のリハビリの違いについては、下記の表を参考にしてください。

  医療保険 介護保険
受けられる場所 医療機関 自宅や施設
目的 病気やケガの回復を促す 体や生活機能の維持・向上
特徴 治療や訓練を重視 日常生活で「できないこと」を「できる」ようにする
利用の制限 日数制限あり 日数制限なし

4. 介護保険で受けられるリハビリサービス

介護保険で受けられるリハビリは3種類です。
それぞれの特徴について、詳しく解説します。

4-1.訪問リハビリテーション

訪問リハビリテーションは、自宅内でリハビリが受けられるサービスです。

リハビリ専門職のスタッフが自宅を訪問し、病状観察や機能訓練、日常生活の指導を行います。施設や病院に通うことが難しい人も安心して利用できるのが特徴です。

▼訪問リハビリテーションで受けられるリハビリの例

  • ストレッチ・関節の運動
  • 歩行訓練
  • 飲み込みの練習
  • 自宅内の日常動作の練習
  • 家族にリハビリ方法を指導
  • 自宅内の危険個所の指摘と改善のアドバイス

4-2.通所リハビリテーション(デイケア)

通所リハビリテーション(デイケア)は、病院や老人保健施設などに通って、専門的なリハビリ指導が受けられるサービスです。

デイケアのリハビリは、本人の状態によって、個別または集団で行われます。
リハビリに取り組む同世代の人々の姿が目に入るため、本人のモチベーションが高まりやすい傾向にあります。

ただし、デイケアには送迎サービスはなく、原則として家族の送迎または本人の自力での通所が必要になります。定期的に外出するため、生活リズムが保たれやすく、閉じこもりを予防できるのも大きなメリットです。

通所介護(デイサービス)との違い

デイサービスで行われる機能訓練もリハビリと呼ばれることがありますが、受けられる内容は異なります。

デイサービスの機能訓練は、医師の指示が不要で、専門職ではなく、介護士や機能訓練指導員らが行うものです。歩行訓練、脳トレなどがメインとなり、デイケアのほうが、より専門的な内容のリハビリが受けられます。

4-3.入所リハビリテーション

入所リハビリテーションとは、施設で暮らしながらリハビリが受けられるサービスです。

入所リハビリは、生活しながら集中的にリハビリできるのがポイントです。
施設に在籍しているリハビリ専門職の指導が受けられます。

ただし、施設によって受けられるリハビリが異なるため、入所前にあらかじめ確認しておきましょう。

入所リハビリが受けられる施設の特徴は、下記の表を参考にしてください。

施設の種類 特徴
介護老人保健施設
  • 本格的なリハビリが受けられる
  • 原則として3~6ヶ月の短期入所が基本(終身入居不可)
介護医療院
  • 本格的なリハビリが受けられる
  • 医療や介護が充実している
  • 多床室が多く、プライバシーの保護が難しい
有料老人ホーム
  • リハビリの内容や充実度は施設によって異なる
  • 独自のリハビリプログラムを運営している施設もある
  • レクリエーションの充実、プライバシーへの配慮から、生活の満足度が高い傾向にある

5.高齢者のリハビリにおける3つの注意点

最後に、高齢者のリハビリを行う上で、家族やリハビリスタッフが注意すべきポイントを3つご紹介します。

5-1.本人のレベルに合ったリハビリ計画を立てる

1つ目の注意点は「本人のレベルに合ったリハビリ計画を立てる」です。

本人のレベルにあったリハビリでなければ、期待する効果が得られないだけでなく、状態が悪化する可能性があります。

リハビリ計画は、以下を配慮の上で作成するといいでしょう。

  • 年齢
  • 性別
  • 体力や運動機能のレベル
  • 疾患の有無
  • 運動習慣の有無

オーダーメイドのようなリハビリ計画が理想ではありますが、実際に取り組んでみなければ分からない部分が多いのも事実です。

そのため、初めは無理なく実践できる内容の計画にし、本人の能力に合わせて内容を変更していくといいでしょう。

5-2.リハビリが必要な部位以外もチェックする

2つ目の注意点は「リハビリが必要な部位以外もチェックする」ことです。

高齢者は、健康そうに見えても、何らかの疾患を抱えていたり、突然体調を崩したりするからです。

リハビリが必要な部位ばかり見ていると、別の部位に大きな負荷がかかっていることや病気の前兆を見逃す恐れがあるので注意しましょう。

5-3.リハビリを強要しない

3つ目の注意点は「リハビリを強要しない」ことです。

嫌がる本人に無理やりリハビリをさせても、期待する効果は得られません。

「リハビリの時だけ仕方なく動く」場合、やる気や集中力に欠けるため、ケガにつながる恐れもあります。

リハビリで期待する効果を得るためには、リハビリスタッフと本人が二人三脚で取り組む必要があります。本人が「やりたい」という気持ちになるような働きかけを行い、無理なく継続するようにしましょう。

まとめ

高齢者のリハビリは、単に身体機能を回復するだけでなく、QOL(生活の質)を向上させるメリットがあります。「できることを、できる限り維持すること」は、自立した生活はもちろん、精神面にも良い影響を与えるでしょう。

ALSOKジョイライフの各施設では、身体状態の維持・回復に向けた機能訓練を実施しています。機能訓練は、緊密な医療連携のもとで行うため、退院後の入所先に最適です。
「いつまでも自分らしく生き生き暮らしたい」という方は、ぜひ一度ご見学ください。