「健康寿命」を伸ばす運動6つ|いつまでも元気でいるために習慣化を
「人生100年時代」といわれるようになりました。
厚生労働省の2022年のデータでは、男性の平均寿命は81.05歳、女性は87.09歳。しかし、自立した生活が送れる「健康寿命」は、平均寿命よりも8〜12年ほど短いことが分かっています。
どんなに長生きしても、健康寿命が短ければ、自分らしく元気で暮らすことはできません。
医療や介護を必要とせずに、自立して暮らすためには、「いかに健康寿命を伸ばせるか」が重要になります。
そこで、この記事では、健康寿命を伸ばすために実践したい運動について詳しく解説していきます。また、認知症予防が期待できるコグニサイズについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
健康寿命とは
健康寿命とは、「心身ともに健康で、自立して生活できる期間」のことです。
自立した生活とは、「介護や支援なしで日常生活が送れる状態」を指します。
2019年の厚生労働省のデータによると、平均寿命と健康寿命の差は、男性8.73年、女性12.06年となっています。
平均寿命と健康寿命の差は、医療や介護が必要になる可能性があることを意味しています。
健康寿命を伸ばすことができれば、以下のメリットが得られ、高齢期を幸せに過ごせるでしょう。
- 自分らしく過ごせる期間が長くなる
- 介護期間が短くなる
- 医療費や介護費用を削減できる
- 家族の負担を軽減できる
健康寿命と運動の関係
健康寿命を伸ばすのに、運動はどのような影響を与えるのでしょうか。
ここでは、運動の重要性や運動量について解説します。
運動の重要性
加齢とともに運動機能が低下する高齢者にとって、運動はとても重要です。
なぜなら、身体機能の維持だけでなく、精神面の安定や病気予防につながるからです。
運動で体を動かすと、血流が良くなるので、気分転換やストレス発散のほか、脳梗塞などの病気を予防する効果が期待できます。
また、運動は脳へ適度に刺激を与えるため、認知症の予防にも有効とされています。
- 気分転換
- 体力向上
- ストレス発散
- 心肺機能の向上
- 認知機能低下の予防
- 免疫力低下の予防
高齢者に必要な運動量
厚生労働省が公表する「健康づくりのための身体活動基準2013」では、65歳以上の健康な人は、毎日40分の身体活動(生活活動・運動)が推奨されています。
40分の身体活動といっても、横になったままや座ったままでなければ、どのような動きでも構いません。大切なのは、今よりも体を動かすことです。
年齢や能力に応じて、以下の運動を1つ以上行うといいでしょう。
- ストレッチや体操を1日10分程度
- 散歩やウォーキングを1日20分程度
- 筋力トレーニングを1週間に2回程度
- レクリエーション活動や軽スポーツを1週間に3回程度
具体的にどのような運動を行えばいいのかについては、次章でご紹介します。
高齢者におすすめの運動6つ
ここでは、高齢者におすすめの運動を6つご紹介します。
無理なく続けられそうなものに取り組んでみてください。
- 散歩・ウォーキング
- 水中運動(水泳・ストレッチ・歩行)
- ラジオ体操
- ストレッチ・筋トレ
- ロコトレ
- コグニサイズ
散歩・ウォーキング
散歩やウォーキングは、全身を使った有酸素運動です。
高齢者が取り組みやすい運動の1つですが、安全性を高めるために以下の方法で実践するようにしましょう。
- 歩く前に、ストレッチをして体をほぐす
- 足元ではなく、目線を上げて進行方向を見る
- 筋を伸ばし、かかとから着地する
- 人と楽に会話できる程度のスピードで歩く
散歩・ウォーキングに慣れた人は、以下の方法を取り入れると、トレーニング効果を高めることができます。
- 肘を曲げ、腕を後ろにしっかり振る
- やや大股で歩く
- 坂道を選んで歩く
- 少し早歩きをする
水中運動(水泳・ストレッチ・歩行)
水中運動は陸上での運動と比べて、膝や腰にかかる負担が軽減されるので、足腰の弱った人でも行えるのが特徴です。水の浮力を利用することで、全身の筋肉を効果的に使えるほか、心肺機能向上も期待できます。
- 腕を大きく振りながらゆっくり歩く
- 大股で歩く
- つま先から着地して歩く
- 上体を横にひねりながら歩く
- 後ろ向きで歩く
- 膝の角度が90度になるように、太ももを上げながら歩く
ラジオ体操
ラジオ体操は、全身の筋肉をまんべんなく動かすように作られた運動です。
約3分間の簡単な運動の中には、有酸素運動、筋トレ、柔軟の要素が盛り込まれています。
「平成25年度 ラジオ体操の実施効果に関する調査研究」では、ラジオ体操を継続的に行っている60歳以上の人の体内年齢は、実年齢よりも10〜20歳若いという結果が出ました。
ラジオ体操の効果を高めるには、自己流で行うのではなく、以下のポイントを意識するといいでしょう。
- 体を伸ばすときは、息を吸う
- 体を曲げるときは、息を吐く
- 1つ1つの動きを丁寧にする
ストレッチ・筋トレ
ストレッチや軽い筋トレは、運動や体力に自信がない人でも手軽にできます。
筋力アップのほか、柔軟性を高めることができるため、転倒予防の効果もあります。
ストレッチは、立った状態だけでなく、イスや床に座っても行うことができます。
リラックスした状態で、ゆっくりと体を伸ばしてみましょう。首を左右にゆっくり倒すだけでも、立派なストレッチになります。
- リラックスした状態で行う
- 動きやすい服装で行う
- できるだけゆっくりと、息を吐きながら筋肉を伸ばす
- 反動をつけないようにする
- 伸ばす筋肉を意識する
- 痛みを感じる手前で動きを止める
- 10~20秒間、動きを止める(呼吸は普通に行う)
以下は、自宅でできる簡単な筋トレです。参考にしてください。
筋トレの種類 | やり方 |
---|---|
イスに座って太もも上げ |
|
骨盤底筋のトレーニング |
|
ロコトレ
ロコトレとは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群:通称ロコモ)を予防するトレーニングです。
ロコモは、加齢に伴う筋力の低下や、関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより、日常生活に障害をきたす状態を指します。進行すると、要介護や寝たきりになるリスクが高くなるので注意しましょう。
ここでは、簡単にできる2つのロコトレをご紹介するので、毎日の習慣に取り入れてください。
ロコトレ①バランス能力をつける「片脚立ち」
- 机かイスにつかまり、床につかない程度に片脚を上げる
- 左右1分ずつ、1日3回行う
<ポイント>
姿勢をまっすぐしながら行う
ロコトレ②下肢筋力をつける「スクワット」
- 肩幅より少し広めに脚を広げ、つま先を30度くらいに開いて立つ
- お尻を後ろに引くように、ゆっくりと膝を曲げる
※膝がつま先より前に出ないように注意 - 深呼吸するペースで5~6回、1日3回行う
※スクワットができない場合は、イスに腰かけ、机に手をついて行う
<ポイント>
- 動作中は息を止めない
- 膝を90度以上曲げない
- 太ももの前や後ろの筋肉にしっかり力が入っているか意識する
コグニサイズ
コグニサイズは、国立長寿医療センターが開発した「認知症を予防するための運動」です。
コグニサイズは、運動しながら計算やしりとりなどの認知課題を行います。体を動かしながら、脳に刺激を与えることは、認知機能の維持や向上につながります。
コグニサイズ①足の横移動と引き算エクササイズ
脚を左右交互に一歩ずつ横に移動させる運動をしながら、
100から3ずつ引く引き算を行う。
<ポイント>
引く数字を変えたり、足し算にしたり、ほかの運動に変えるなど、変化をつけながら行うといい。
コグニサイズ②ウォーキングしりとり
しりとりをしながら、ウォーキングをする。
夫婦や友人など、グループで楽しみながら行う。
<ポイント>
- 計算や川柳を交えてもOK
- 普段よりも大股で歩く
高齢者が運動する際の注意点
最後に、高齢者が運動する際の注意点をお伝えします。
高齢者の運動は、自己判断ですすめると事故やケガを引き起こす可能性があるので注意が必要です。
健康寿命を伸ばすためには、運動を始める前に必ず以下のセルフチェックリストでご自身の体調を確認しましょう。
- 足腰の痛みが強い
- 熱がある
- 体がだるい
- 吐き気がある、気分が悪い
- 頭痛やめまいがする
- 耳鳴りがする
- 過労気味で体調が悪い
- 睡眠不足で体調が悪い
- 食欲がない
- 二日酔いで体調が悪い
- 下痢や便秘をして腹痛がある
- 少し動いただけで息切れや動悸がする
- 咳やたんが出て、風邪気味である
- 胸が痛い
- (夏季)熱中症警報が出ている
上記のセルフチェックリストで1つでも「はい」があったら、運動はしないでください。
運動する際は、体調を崩したり、ケガしたりすることを防ぐために、以下の5つの注意点を守りましょう。
- 持病がある人は事前に主治医に相談する
- 無理をしない
- 水分補給を行う
- 適度に休憩をとる
- 痛みを感じたら、すぐに中止する
今より10分多く体を動かすことを意識しましょう
健康寿命を伸ばすには、運動が大切であることがご理解いただけたかと思います。
しかし、運動といっても、特別なことをしなければいけないわけではありません。今より10分多く体を動かすことを意識するだけでも、効果は期待できます。
「車ではなく、自転車に乗る」「できるだけ階段を使う」「家事をテキパキと行う」など、日常生活の中でこまめに動くのも、立派な運動になります。運動は継続が大切です。健康寿命のためにも、無理せず、できることから始めてみましょう。