高齢者が安全にウォーキングを行う方法|期待できる効果と注意点
体への負担がかかりにくいウォーキングは、老若男女に最適な運動のひとつです。日常で何気なく行っている「歩く活動」も、少しやり方を変えるだけで、立派な介護予防・健康維持になります。
しかし、なかには、
「健康のためにウォーキングを始めたいけれど、どうやればいいのだろう?」
「高齢者がウォーキングをしても本当に大丈夫?」
と不安に感じることもあるでしょう。
そこでこの記事では、ウォーキングがもたらす効果やウォーキングの安全な方法について解説します。注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
高齢者にウォーキングがおすすめの理由
なぜ高齢者にウォーキングがおすすめなのでしょうか。その理由は、以下のとおりです。
▼高齢者にウォーキングがおすすめの理由
- 歩くだけでよい(特別な技術が必要ない)
- 特別な道具がいらない
- お金をかけずにできる
- 体に負担がかかりにくい
- 気軽に始められる
- 健康維持や病気予防の効果が期待できる
ウォーキングは、特別な道具がなくても、「歩きたい」と思った時に、気軽に始められるのが魅力です。
歩くだけで、健康維持や病気予防の嬉しい効果が期待できます。
ウォーキングで期待できる健康効果
ウォーキングはただ歩くだけですが、適度に体を動かすので、体力や筋力維持のほか、心身のリフレッシュに有効です。
一般的には、ウォーキングをすることで、以下のような効果が期待できるとされています。
▼ウォーキングで期待できる健康効果
- 生活習慣病の予防・改善
- 筋力の向上
- 腰痛の予防
- 心肺機能の維持・向上
- ストレスの解消
- 認知症の予防
- フレイルの予防
- 骨粗しょう症の予防
ウォーキングの歩数と強度に注目した研究「中之条研究」では、中強度(早歩きや大股歩き)の負荷をかけることで、予防できる病気があるとしています。
1日の歩数 | うち中強度の歩行時間 | 予防できる病気 |
---|---|---|
2,000歩 | 0分 | 寝たきり |
4,000歩 | 5分 | うつ病 |
5,000歩 | 7.5分 | 認知症・心筋梗塞・脳卒中・要支援・要介護 |
7,000歩 | 15分 | がん・動脈硬化・骨粗しょう症 |
8,000歩 | 20分 | 高血圧症・糖尿病・脂質異常症 |
1日の歩数は、起きてから寝るまでの1日の合計です。特別にウォーキングの時間を設けなくても、1,000歩以上歩いているという人も少なくないでしょう。
「1日にどれくらい歩いているか分からない」という人は、万歩計をつけて生活してみてください。
中之条研究とは
東京都健康長寿医療センター研究所運動科学研究室長の青柳幸利博士が2000年から行っている調査研究。群馬県中之条町の65歳以上の町民5,000人超を対象に、身体活動(歩行)と病気予防の関係について調査したもの。
ウォーキングを安全に行うために知っておくべきこと
ウォーキングは歩くだけといっても、普段あまり動かなかったり、運動経験がなかったりする人がいきなり始めるとケガの危険があります。高齢者のケガは要介護を引き起こす恐れがあるので、気をつけたいものです。
以下に、ウォーキングを安全に行うために知っておきたいことをまとめました。
ウォーキングのやり方 |
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歩く時間の目安 |
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歩く速さ |
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ウォーキングのやり方①準備体操、水分補給
ウォーキング前には、必ず準備運動をしましょう。ただ歩くだけでも、少なからず体に負荷がかかるからです。軽めにストレッチやラジオ体操をすると、柔軟性が高まり、ケガをしにくくなります。
また、ウォーキング前には必ず水分補給をしましょう。軽いウォーキングでも意外と汗をかくからです。脱水状態にならないためにも、歩く前にコップ一杯の水を飲むようにしましょう。
ウォーキングのやり方②ウォーキング(歩き方のポイント)
ウォーキングは姿勢よく歩くように心がけましょう。
ウォーキングのときの目線は、やや遠くを見るようにしましょう。下を向いて歩くと、猫背になるので、腰椎に負担がかかってしまいます。
歩くときは、膝を伸ばしてかかとから着地し、つま先で地面をけりだすようにすると、ふくらはぎもよく使えます。
ウォーキングのやり方③クールダウン、水分補給
ウォーキングをやめるときは、少しずつ歩くペースを落としてから止まりましょう。
ウォーキング後は、軽いストレッチや足をマッサージすると、疲労感を軽減させることができます。
のどの渇きを感じなくても、ウォーキング後は水分補給をして、脱水状態を予防しましょう。
歩く時間の目安
運動習慣のない人は、まずは10分間を目標に歩きましょう。いきなり長時間歩くと、体に過度な負荷がかかり、健康を損ねる場合があるからです。
今よりも10分多く歩くことを目標にし、慣れてきたら20〜30分に挑戦しましょう。
歩く速さ
歩く速さは、「普段と同じ~やや速い速度」がいいでしょう。ウォーキング後に少し汗ばむくらいの速さが理想です。
ずっと速足で歩くのではなく、普段と同じ速さで歩きながら、途中で少し早歩きすると、体に負担がかかりにくいでしょう。
高齢者のウォーキングで注意すること
見た目や気持ちは元気でも、加齢とともに身体機能は衰えている可能性があります。
安全にウォーキングするためにも、注意してほしいことを4つお伝えします。
しっかり水分補給をする
脱水状態になることを防ぐために、ウォーキング前後にかならず水を飲みましょう。ウォーキング時間が長くなる場合は、こまめに水分補給をしてください。
また、気温が高い日は、熱中症を防ぐために、塩飴や塩分タブレットなどでミネラルの補給も行いましょう。
持病のある人は医師に相談を
持病がある人や健康に不安を感じる人は、ウォーキング前に医師に相談しましょう。ウォーキングを実施していいか、また実施可能なら守るべき注意点を聞いておくと安心です。
早朝や夜間のウォーキングは交通事故に注意
早朝や夜間のウォーキングは、交通事故に注意しましょう。車や自転車から見えやすいように、「明るい色の服を着る」「反射する素材を身に付ける」などの対策が必要です。
無理しない
ウォーキングで大切なのは、絶対に無理をしないことです。「何となく気分が乗らない」「体調がいまいち」と感じるときは、思い切ってお休みしましょう。
特に、天気が悪かったり、暑かったりする日は、風邪やケガ、熱中症になるリスクが高くなります。無理のないペースで続けるように心がけましょう。
高齢者のウォーキングにまつわるQ&A
最後に、高齢者のウォーキングにまつわる疑問をQ&Aでお答えします。
Q1. どんな靴を選べばいいの?
A1. 履きやすい・歩きやすい靴でOK!ただし、専用の靴の方が安心
ウォーキングは、履きやすい・歩きやすい靴で行いましょう。必ずしも専用のウォーキングシューズでなければいけないということはありません。
しかし、ウォーキング専用の靴は、普通の靴よりもクッション性に優れており、足や腰にかかる負担を軽減できます。まずは、履きなれた靴でウォーキングしてみて、続けられそうなら専用の靴を購入してもいいでしょう。
Q2. 足や腰への負担が心配
A2. ポールを使う「ノルディック・ウォーキング」がおすすめ
足や腰への負担が心配な人には、ポールを使う「ノルディック・ウォーキング」がおすすめです。ノルディック・ウォーキングは、両手にポールを持ち、クロスカントリーのように交互に地面につきながら歩きます。足だけでなく、2本の棒で体を支えるので、足腰に不安がある人でも取り組みやすいでしょう。
▼ノルディック・ウォーキングのメリット
- 足腰の負担を軽減できる
- 転倒しにくくなる
- ポールの持ち方やつく位置を変えることで、負荷を調整して運動できる
Q3. ウォーキングに適した時間帯はある?
A3. 夕方がおすすめ
ウォーキングにおすすめの時間帯は夕方です。夕方に適度な運動をすると、心地よい疲れを感じるだけでなく、体温が上がることから、安眠しやすくなる効果があります。
ウォーキングは好きなタイミングで行ってよいものですが、起床後1時間以内はできるだけ避けましょう。心筋梗塞や脳卒中などが発生するリスクが高いとされているからです。
ウォーキングを習慣化して健康長寿を目指そう
ウォーキングは、ひとりでも気軽に行える全身運動です。外に出て歩くことで、引きこもりの防止になります。自宅や知っている街も、歩く道を変えると、違う景色が見えてくるはずです。ウォーキングは、新しい発見や人とのコミュニケーション機会が増えるので、体力向上だけでなく、精神面にも良い影響をもたらすでしょう。
とはいえ、無理は禁物です。ご自身の体力や体調に合わせて、ウォーキングを楽しんでください。