アニマルセラピーとは?気になる効果と介護施設の取り組みを紹介
「アニマルセラピー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本では、動物との触れ合いを通じて、心身の健康を促進する活動を指します。
近年の研究では、認知症にも効果が期待できるとされ、介護施設でのイベントやレクリエーションで取り入れられることも増えてきました。この記事では、アニマルセラピーが高齢者にもたらす効果や介護施設の取り組みについてご紹介します。
アニマルセラピーとは
アニマルセラピーとは、動物との交流を通じて、癒しや安心感などの効果を得る活動のことです。
アニマルセラピーの歴史は古く、最も古いものでは紀元前400年、古代ローマ時代に負傷した兵士のリハビリに馬を用いたという記述が残っているとか。18〜19世紀のヨーロッパでは、精神科疾患の治療に動物の世話が取り入れられたとの記録もあるそうです。20世紀に入るとアメリカやヨーロッパで動物を介在させる治療の研究が進み、私たちにとって最も身近な動物といえる犬を治療に介在させる「ドッグセラピー」の取り組みも本格化していきました。
現在アニマルセラピー・ドッグセラピーは、幅広い場所で活用されています。介護施設でも実施するところが増えており、ドッグセラピーを体験した高齢者の表情に明るさが戻るなどの効果が報告されています。
アニマルセラピーで期待できる5つの効果
アニマルセラピーは具体的にどのような効果をもたらすのでしょうか。
ここでは、期待できる5つの効果を解説していきます。
リラックス・心の安定
動物と接すると、心が癒されたり、落ち着いたりしますよね。
これは、動物と触れ合うことで、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」が分泌されるからです。オキシトシンは、ストレス緩和や情緒を安定させる効果があります。
オキシトシンが分泌されると、副交感神経が優位になり、いわゆる「リラックス」した状態になります。そのため、動物との触れ合いは、自然なリラックスや心の安定につながるとされています。
抑うつ症状の改善
動物との触れ合いは、「楽しい」「嬉しい」などのポジティブな感情をもたらすため、抑うつ症状の改善が期待できます。
抑うつ症状とは、「気分が落ち込む」「何もする気になれない」心の状態をいいます。
高齢になると、加齢に伴い、環境の変化や身体機能の低下などにより、うつになりやすいと考えられています。
これまでの研究によると、動物との触れ合いで血圧や心拍数が下がり、ストレスホルモンであるコルチゾールも減少していることが分かっています。そのため、抑うつ症状がある人にとって、アニマルセラピーはQOL(生活の質)を向上させる重要な手段の一つとして注目されています。
身体機能維持の促進
アニマルセラピーは、身体機能を維持する効果が期待できます。動物と接するために、体を動かしたり、体を動かす意欲がわいたりするからです。
普段あまり体を動かさない人も、「動物と遊びたい」「世話をしたい」という気持ちがモチベーションになることがあります。動物の散歩はウォーキングになりますし、座ったまま遊んでも、手や腕を動かすので、筋肉を鍛えることができますよ。体を動かすことは、身体機能を維持するためにも必要です。
コミュニケーションの活性化
アニマルセラピーは、コミュニケーションの活性化に役立ちます。動物という共通の話題があり、それが会話のきっかけになるからです。
動物を見て、「かわいいな」「おもしろいな」と感じると、自然と笑顔になりますよね。動物に触って「あたたかい」「やわらかい」などと感じたら、その感想が自然と発語につながります。「人と話すことが苦手」という人も、動物と接することでリラックスした状態になるため、会話も盛り上がりやすくなります。これらの要素が、コミュニケーションの促進に役立ちます。
意欲の向上
アニマルセラピーは、高齢者の意欲向上に役立ちます。セラピーで接する動物は「お世話しなければ」「かわいがってあげないと」などと、守りたい・世話をしたいという欲求の対象になりやすいものだからです。
アニマルセラピーでは、高齢者自らがセラピーの動物をケアする立場になります。動物は撫でられたり、かわいがられると、気持ちのよさそうな表情をしますよね。自分が撫でた動物がそのような表情をしたら、「自分は動物を喜ばせることができた」と実感できるので、達成感・幸福感を得やすくなります。
認知症リスクの低減も期待できる
ここでご紹介した5つの効果は、いずれも認知症ケアとしても有効なものとされています。そのため、アニマルセラピーは、認知症リスクの低減が期待できます。
介護施設におけるアニマルセラピーの内容
介護施設では、どのようにアニマルセラピーを行うのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
イベントやレクリエーションとして実施されることが多い
介護施設では、アニマルセラピーは多くの場合、イベントやレクリエーションとして行われます。動物を飼育している介護施設は少なく、ボランティアや専門の団体に依頼して、セラピーに適した動物を施設に連れてきて貰うのが一般的です。
介護施設では、犬や猫、モルモットなどの小動物がセラピーに用いられます。
介護施設のアニマルセラピーでできること
介護施設でアニマルセラピーを行う際は、介護スタッフや動物に慣れた専門スタッフが触れ合いをサポートしてくれます。
介護施設のアニマルセラピーでできることは以下のとおりです。
- 動物の名前を呼んだり、話しかけたりする
- 名前を呼んで、近くに来させる
- 撫でたり、抱っこしたりする
- ボールやおもちゃを投げて遊ぶ
- エサやおやつを与える
- 一緒に散歩をする
上記は、あくまで一例です。実際の触れ合い内容は、入居者の身体状態や精神状況を考慮した上で行われます。「動物が苦手」「動物に触れたくない」と拒否反応がある入居者に対して、動物の触れ合いを強要することはありません。
介護施設のアニマルセラピーをご紹介します!
実際の介護施設でどのようにアニマルセラピーが行われているのか気になりますよね。
「ALSOKジョイライフ」が運営する介護付き有料老人ホームでも、ホーム主催のイベントなどでアニマルセラピーやドッグセラピーを実施しています。
ここでは、ユトリーム大阪北で行われたドッグセラピーをご紹介します。
ユトリーム大阪北では、介護が必要な方とそうでない方の2部制でアニマルセラピーを実施しました。2部制で実施することで、スタッフの目が行き届きやすくなり、ケガや事故の防止になりますね。
抱っこや握手でご挨拶
この日、来てくれたのは、セラピー犬3頭、中型犬2頭と小型犬1頭の組み合わせ。
入居者一人ひとりと抱っこや握手などでコミュニケーションを取りながら挨拶をしてくれます。
半年前にも来てくれたセラピー犬を覚えていたご入居者さまは「また会いましたね!」と再会をとても喜んでいました。
同じ目線で触れ合いを楽しむ
セラピー犬とゲームを楽しむ
ご入居者さまとセラピー犬で、ボール投げやくじ引きのゲームも行いました。
くじ引きでは、まず参加者の方に1〜3の数字を書いたカードを引いてもらいます。
セラピー犬が同じ数字のクッションを選べば当たりです。
同じ数字が書かれたカードを持っている参加者の方はくじで『おやつやり』『写真撮影』『プレゼント』から一つを選びました。
セラピー犬と記念撮影
記念撮影では、セラピー犬がいろいろなデザインの被り物をしてくれました。
3頭が被り物をすると、ご入居者さまもスタッフも「キャー、かわいい!」と大喜び。
被り物をしたセラピー犬は本当にかわいらしいですね。
このほかにも、さまざまな被り物をしたパターンで記念撮影が行われました。
セラピー犬の写真が載ったカレンダーのプレゼント
セラピーの最後はみんなで万歳三唱
セラピーの最後はみんなで万歳三唱をしました。
セラピー犬たちは高くジャンプ!すごいですね。
この日、初めてドッグセラピーに参加された方が2名。お2人とも満面の笑みでセラピー犬と触れ合っていたそうです。
介護施設でのアニマルセラピーを希望する場合、事前に施設に確認を
アニマルセラピーは、介護施設で行われる人気のレクリエーションの一つです。
特に、動物好きな人や動物を飼っていた人にとっては、「ぜひやってみたい」と感じることでしょう。しかし、アニマルセラピーには、衛生面や人員確保などの問題があり、すべての施設で実施されているわけではありません。そのため、介護施設でのアニマルセラピーを希望する人は、事前に実施の有無や実施内容について確認しておくといいでしょう。