【2024年】介護保険制度改正のポイントと影響をわかりやすく解説
介護保険制度が2024年4月に改正されました。日本の少子高齢化が進む中で、制度を維持するために、介護保険制度は3年ごとに見直されています。
今回の改正では、介護サービスの質を高めるためのさまざまな取り組みが含まれていますが、「内容がわかりにくい」と感じる利用者も少なくありません。
そこでこの記事では、2024年度の介護保険制度改正の主なポイントをわかりやすく解説します。また、今回見送られた改正案についても取り上げ、今後の動きについても理解を深めていきましょう。
2024年「介護保険制度」改正の主なポイント6つ
今回の改正で押さえておきたい主な変更点は、以下の6つです。
- 65歳以上の方が支払う介護保険料の変更
- 介護報酬の引き上げ
- 地域包括ケアシステムの深化・推進
- 自立支援・重度化防止に向けた対応
- 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
- 制度の安定性・持続可能性の確保
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
65歳以上の方が支払う介護保険料の変更
今回の改正では、65歳以上の方が支払う介護保険料の見直しが行われ、全国平均で3.5%上がる結果となりました。全国平均の基準値は月額6,225円で、前回の改正時から約200円増加しています。
介護保険料の引き上げの理由は、主に以下の2つです。
- 高齢者が増え、介護サービスを利用する人が増加したこと
- 介護職員の給料を改善する必要があること
ただし、介護保険料は地域の高齢化率や介護サービスの利用状況などを考慮して決定されるため、各市町村によって異なります。お住まいの自治体の窓口やホームページで確認してみましょう。
介護報酬の引き上げ
介護サービスの料金(介護報酬)が、全体で1.59%引き上げられました。この引き上げには、主に以下の3つの目的があります。
- 介護の仕事をする人の給料を増やす
- 介護施設(事業所)の経営を安定させる
- 介護サービスの質を高める
介護の現場では、業務内容や責任の重さと比較して、給料が低い傾向にあることが問題となっています。そのため、介護業界は慢性的な人材不足となっているのが現状です。今回の引き上げで、この状況が改善されることが期待されています。
地域包括ケアシステムの深化・推進
地域包括ケアシステムとは、高齢者が要介護状態になっても、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるための支援体制のことです。
今回の改正では、この支援体制をより強化するための施策が盛り込まれました。
主な取り組みは以下のとおりです。
- 介護と医療の連携強化
- 看取りの対応強化
- 感染症や災害への対応力向上
- 高齢者虐待防止
- 認知症ケアの対応力向上
- 福祉用具の貸し出しや特定福祉用具販売の見直し
特に医療ニーズの高い人や認知症の人にとって、安心して生活できる環境づくりが期待されます。
自立支援・重度化防止に向けた対応
高齢者ができるだけ長く自立した生活を送れるように、以下の3つのサービスが強化されます。
- リハビリテーション
- 口腔ケア(お口の手入れ)
- 栄養管理
また、これらのサービスの効果を科学的に検証し、より効果的な介護を提供するための「LIFE(科学的介護情報システム)」の活用も推進されます。
良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
介護人材の確保・定着は、介護業界の大きな課題のひとつです。今回の改正では、「介護職員処遇改善加算」が見直され、より多くの職員が給料アップの恩恵を受けられるようになりました。
さらに、ICT・介護ロボットの活用を促進することで、業務の効率化と職員の労働環境改善を目指します。ICTや介護ロボットを活用すると、職員の事務処理や見守りなどにかかる時間を軽減でき、利用者のケアに多くの時間をさけるようになると期待できます。
制度の安定性・持続可能性の確保
少子高齢化が進む日本社会において、介護保険制度を維持するために、以下の見直しが行われます。
- 介護報酬の見直しや簡素化
- 長期利用が多くなりやすい短期入所サービスの見直し
介護報酬の見直しの一例として、訪問介護の「同一の建物居住者へのサービス提供時の報酬の減算」が挙げられます。老人ホームなど同じ建物のうち、複数の利用者がいる場合に適用されるものです。
同じ建物の場合、移動距離や移動時間が短縮されることから、今回の改正より、報酬の適正化のために見直しが行われます。
このように、すべての世代が安心できる介護制度の実現を目指し、さまざまな取り組みが進められています。
2024年度の介護保険制度改正で見送られた3つの内容
今回の介護保険制度改正で見送られた内容のうち、将来的に検討される可能性が高いのが以下の3つです。
- 自己負担割合の引き上げ
- 要介護1~2向けサービスを「総合事業」へ移行
- ケアプランの有料化
いずれも改正が行われると、利用者に大きな影響が出るものなので、きちんと確認しておきましょう。
自己負担割合の引き上げ
1つめは、現在、原則1割(所得に応じて2割または3割)となっている利用者の自己負担割合を、さらに引き上げる案です。
高齢者の増加にともない、制度の持続性を高めるために、次回以降、自己負担割合の引き上げが再検討される可能性があります。
要介護1~2向けサービスを「総合事業」へ移行
2つめは、軽度の要介護者(要介護1〜2)に対する訪問介護や通所介護などのサービスを、介護保険制度から外し、市町村が運営する「総合事業」へ移行する案です。
総合事業への移行が実施されると、要介護1〜2の人の自己負担額だけでなく、利用できるサービスの内容が変わる可能性があります。
今回の改正では見送られましたが、地域の実情に応じたサービス提供を目指し、将来的に再検討されることも考えられます。
ケアプランの有料化
3つめは、現在無料で作成されているケアプランを有料化する案です。
ケアプランが有料化されると、利用者の経済的負担は増加しますが、より適切なケアプラン作成につながることが期待されます。
まとめ
2024年の介護保険制度改正は、より良い介護サービスの提供を目指す内容となっています。利用者にとっては、保険料や利用料が増加する恐れはあるものの、介護サービスの質向上や地域に根差したケアの充実が期待できるでしょう。
介護は誰もが直面する可能性のあるものです。制度の変更内容をよく理解し、自分や家族に合ったサービスを選べるよう、日頃から関心を持っておくことが大切です。