耳よりだより

介護保険制度とは?仕組みから要介護認定の基準・手続きまで分かりやすく解説!

介護保険制度は、介護の負担を社会全体で支え合うため、2000年に創設されました。
施行から20年以上経ちますが、仕組みが複雑なうえ、3年に1度改正されることから「よく分からない…」と感じる人も多いようです。

この記事では、介護保険制度を分かりやすく解説していきます。
制度の基本はもちろん、要介護認定申請から認定までの流れについても把握していただけると思います。

介護保険制度の基礎知識

まずは、介護保険制度の基本を押さえておきましょう。

介護保険制度の仕組み

介護保険制度とは、介護や支援が必要な人に、費用やサービスを給付する制度です。
介護や支援の必要性が認められると、少ない費用負担で介護サービスが受けられます。

上記の図のように、介護保険制度は、国や地方自治体、国民が納めた介護保険料で運営されます。

介護保険は公的な社会保険の1つです。
原則として40歳以上のすべての国民は、介護保険料の支払いが義務付けられています。
介護保険料の支払い方法は次のとおりです。

40~64歳の人 健康保険料と一緒に徴収
65歳以上の人 年金から天引き
※年金が年18万円以下の人は、口座振替または役所などで支払い

介護保険制度の目的

介護保険制度の目的は、次の2つです。

  1. 介護をする家族の負担を減らす
  2. 高齢者の自立を支援し、要介護になりにくくする

かつては「家族の介護は家族が行うこと」が一般的だった日本。
しかし、核家族化や超高齢化社会が進んだ現代では「家族だけで介護を行う弊害」が社会問題となりました。

家族だけで行う介護の弊害

  • 老老介護になりやすい
  • 介護離職につながりやすい
  • 介護する人・される人に大きな負担がかかる
  • 家族が共倒れになる可能性がある
  • 要介護度が進みやすい
この対策として導入されたのが、介護保険制度です。

介護保険の利用者は2種類に分かれる

介護保険を利用できる人は、下記のどちらかに該当する人です。
  65 歳以上の方
(第1号被保険者)
40 歳から 64 歳の方
(第 2 号被保険者)
対象者 65 歳以上の方

40 歳以上 65 歳未満の健保組合、全国健康保険協会、市町村国保などの医療保険加入者
(40 歳になれば自動的に資格を取得し、65 歳になるときに自動的に第 1 号被保険者に切り替わります。)

受給要件
  • 要介護状態
  • 要支援状態
  • 要介護(要支援)状態が、老化に起因する疾病(特定疾病※)による場合に限定。
保険料の
徴収方法
  • 市町村と特別区が徴収
    (原則、年金からの天引き)
  • 65 歳になった月から徴収開始
  • 医療保険料と一体的に徴収
  • 40 歳になった月から徴収開始

出典:介護保険制度について|厚生労働省

第2号被保険者で、介護保険が利用できるのは、以下の16の特定疾病が要介護(要支援)状態の原因と認められた人だけです。
<厚生労働省が認める特定疾病(16種類)一覧表>
  1. がん末期
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靭帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗しょう症
  6. 初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症等)
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  8. 脊髄小脳変性症(ウェルナー症候群等)
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎等)
  16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護保険を利用するには、要介護(要支援)認定が必要です。要介護認定の申請方法については次章で解説します。

要介護認定申請の手続き方法

介護保険のサービスの利用には、要介護認定を受ける必要があります。
要介護認定申請から認定までの流れ
  1. 窓口で申請する
  2. 訪問面談による認定調査を受ける
  3. 一次判定
  4. 二次判定
  5. 申請結果を受け取る
それぞれ詳しく解説していきます。

1. 窓口で申請する

まずは、お住いの市区町村の担当窓口で、要介護認定の申請をします。
本人が窓口まで行けない場合は、家族や地域包括支援センターのスタッフ等に代行申請してもらうこともできます。
要介護認定の申請に必要な物
  • 要介護認定申請書(市区町村や地域包括支援センターの窓口で入手可能)
  • 介護保険の被保険者証(65歳以上の人)
  • 健康保険の被保険者証(40~64歳で特定疾病のために介護が必要な人)
  • マイナンバーカード
  • 主治医意見書または主治医意見書を依頼する医療機関の診察券

主治医意見書とは?

主治医意見書は、かかりつけ医が申請者の病歴や精神状態などについて記載するものです。
持病の状態説明や、介護が必要な状態であるか、また特定疾病に該当するかなど、主治医の見解が盛り込まれています。

主治医意見書は、訪問面談による認定調査や一次判定の資料として用いられます。
 

2. 訪問面談による認定調査を受ける

介護認定の申請をしたら、調査員(市区町村の職員またはケアマネジャー)が自宅や入院先などを訪問し、本人の現在の状態などを調査します。

認定調査は、居住環境・家族状況の概況や日常的な動作に関するものなど、厚生労働省が定めた調査項目に沿って行われます。また、聞き取りだけでなく、手足を動かしたり立ってみたりといった動作を実際に行うこともあります。

認定調査の所要時間はおよそ1時間です。
具体的な調査内容については、以下を参考にしてください。

認定調査での受け答えによって、認定結果が変わることがあります。
次項では、正確な認定結果を得るための注意点を2つご紹介します。

認定調査の注意点1:家族も同席する

認定調査はできるだけ家族も同席しましょう。

本人だけで調査を受けると、本人の状態よりも低い認定が出てしまう恐れがあるからです。

 

高齢になると認知機能が低下したり、しっかりしているところを見せたくなったりする傾向があります。できないことを「できる」「大丈夫」と答えてしまうのも、よく聞く話です。

 

正しい認定結果が出ないと、希望のサービスが受けられなくなる可能性があります。

認定調査の日程は希望することができ、時間帯なども考慮してもらえますから、必ず家族が同席するようにしましょう。

認定調査の注意点2:困っていること・不安なことを伝える

適切な結果を得るためには、本人や家族が困っていたり、不安に感じていたりすることを伝えましょう。

 

認定調査票の項目に該当しないことでも、調査員が重要と感じたことは「特記事項」に記載されます。特記事項は、二次判定時に参考にされるもので、要介護度の認定にも影響を与えます。

具体的なエピソードがあると、調査員もイメージがしやすいため、本人の日頃の様子をメモに取っておくといいでしょう。

3. 一次判定

要介護認定は、一次・二次と2回の判定作業があります。一次判定は、コンピューターによる自動判定です。

一次判定では、訪問による訪問調査票と主治医意見書をもとにコンピューターが全国共通のシステムを用いて判定します。

4. 二次判定

二次判定は、介護認定審査会(保健・医療・福祉に関する5人程度の専門家)によって行われます。二次判定で用いられるのは、次の3つです。

  • 一次判定の結果
  • 主治医意見書
  • 訪問調査票の特記事項

これらの資料をもとに、各専門家がそれぞれの専門性において、介護が必要な状態か、一次判定結果が適切か否かなどについて話し合い、二次判定を確定します。

5. 申請結果を受け取る

二次判定の結果をもとに、市区町村が要介護認定をします。
原則として、申請した日から30日以内に、認定結果通知書と認定結果が記載された被保険者証が本人に郵送されます。

要支援・要介護状態の区分の目安

要介護度は、病気やケガなどの症状の程度ではなく、どのくらい介護の手間(時間)がかかるかという基準で判定されます。

重い病気やケガをしていても、自分でできることが多ければ、要支援・要介護認定とは認められにくくなります。以下の表に目安となる身体・精神状態を区分ごとにまとめました。

区分 身体・精神状態
要支援1
  • 食事や排せつ、立ち座りなどは自分でできる
  • 料理や掃除などで何らかの支援が必要
要支援2
  • 掃除などの行為が難しく、食事や排せつ、立ち座りなどの動作にやや困難がみられる
    ※リハビリにより改善する見込みの高い人
要介護1
  • 立ち上がりが困難など、部分的な介助が必要
  • 認知症状により一部の動作に介助が必要
要介護2
  • 立ち上がり・歩行などが自分では難しい
  • 要介護1よりも解除の必要性が増える
  • 認知機能の低下があり、一部の動作に介助が必要
要介護3
  • 立ち上がり・歩行などが自分ではできない
  • 排せつ・入浴などに多くの介助が必要
  • 認知機能が低下し、周辺症状(BPSD)が現れる
要介護4
  • 全面的な介護が必要
  • 意思の疎通は可能だが、意欲の低下や睡眠状態の時間が長くなり、活動的な動作が見られなくなってくる状態
要介護5
  • 全面的な介護が必要な状態
  • 意思の疎通が難しい
  • 認知症状により、意志の伝達が困難な状態

 

なお、要介護認定の結果には、有効期限があります。
要介護認定の有効期限は、新規の場合は原則6ヵ月、更新の場合は12ヵ月です。

ただし、状態が急に変化して要介護度が適切でないと思う場合には、これらの期間を待たずに変更の申請をすることができます。

介護保険で利用できる2種類のサービス

介護保険で利用できるサービスは、要介護認定の区分により異なります。

  • 要介護1~5の人が利用できるサービス:「介護給付」
  • 要支援1~2の人が利用できるサービス:「予防給付」
介護給付で受けられるサービス(一例)
  • 自宅での入浴介助
  • 訪問看護
  • 夜間や24時間、必要時に介護・看護サービスを受けられる
  • デイサービス(施設を日帰りで利用する)
  • 施設へのショートステイ
  • 老人ホームや老人施設への入所
  • 生活しやすい環境を整える支援
要支援者が受けられる「予防給付」は、要介護状態になることを防ぐのが目的です。
予防給付で受けられるサービス(一例)
  • 自宅での入浴介助
  • 訪問看護
  • 自宅でのリハビリ
  • デイケア(施設に通ってリハビリを受ける)
  • 施設へのショートステイ

介護保険サービスの利用料について

先にお伝えしたとおり、介護保険制度は保険料で運営されています。
そのため、利用者は介護サービスにかかる費用の1割(一定以上の所得者は2〜3割)を負担することになります。

以下は、大阪市で訪問入浴介護を利用した場合の利用者負担額(1割)です。

サービス費用の設定(※) 1回あたりの利用者負担
全身入浴の場合 1,402円
部分入浴の場合 1,261円

※看護師又は准看護師1名及び介護職員2名で実施した場合

出典:介護保険で利用できる居宅サービス |大阪市より筆者作成 ※2023年4月現在

ただし、介護保険サービスの利用料は、月額の上限額が区分ごとに決まっています。
これは費用が低いことで、一部の利用者が際限なくサービスを使うのを防ぐためです。
大阪市の区分ごとの上限は、以下の表をご確認ください。
要支援1 5万6,000円
要支援2 11万7,200円
要介護1 18万6,500円
要介護2 21万9,200円
要介護3 30万800円
要介護4 34万4,100円
要介護5 40万2,800円

上限を超えて利用したサービスは、超過分が全額自己負担となります。

また、介護保険サービスの利用料には、軽減制度が設けられています。
自己負担額が高額になり、所得に対して費用負担が大きい人は、市区町村の窓口で相談することもできます。

介護サービスは申請した日から利用が可能

原則として、介護サービスは要介護認定の結果を受けてから利用できるものです。
中には、「要介護認定の結果を待てない。すぐに介護サービスが必要」ということもあるでしょう。

このような場合は、特例として申請した日から介護サービスの利用が可能です。
しかし、要介護認定の結果によって、利用限度額が異なるので注意が必要となります。

想定よりも要介護度の判定が低いと、超過した分の費用が全額自己負担になります。
そのため、認定結果が出るまでの利用は、必要最低限のサービスにとどめておく方が安心です。

まとめ

ALSOKジョイライフの、自立の方が入居いただける施設では、入居後に介護認定が必要になった場合のご相談も承っております。また、介護認定をお持ちの方が入居いただける施設も用意しております。

お気軽に各施設までお問い合わせください。