高齢者の防犯対策|狙われやすい理由と今すぐできる3つの対策
高齢者を狙った犯罪が増えている背景
高齢者を標的にした侵入窃盗や特殊詐欺は増加傾向にあり、手口もより巧妙で悪質になってきています。
- 住宅への侵入窃盗や強盗は増加傾向で、手口も悪質化している(国土交通省)
- 特殊詐欺の被害者は依然として高齢層が多く、手口も年々多様化(警視庁)
- 単身高齢者世帯や日中在宅の家庭が増え、在宅状況を見極めやすい環境が広がっている
- 地域のつながりが薄れ、被害に気づかれにくくなっている
- SNSを使った投資詐欺やロマンス詐欺など、新しい手口の被害も報告されている
高齢者を狙った犯罪が増えている背景には、社会環境や生活スタイルの変化があります。
高齢化の進行に伴い、ひとり暮らしや高齢者のみで暮らす世帯が増え、日中に在宅している家庭も多くなりました。こうした住宅は、犯人にとって生活パターンを把握しやすく、侵入や電話による接触の標的になりやすいとされています。
また、地域のつながりが以前より希薄になり、不審な人物が出入りしていても周囲が気づきにくい環境が増えています。
さらに、犯罪グループは組織化が進み、事前に住宅を下見したり、名簿を利用して電話をかけたりするなど、効率的に犯行を行うケースが増えています。近年は電話だけでなく、SNSやメッセージアプリを利用した投資詐欺やロマンス詐欺など、新たな手口も次々と現れており、インターネットに不慣れな高齢者が被害に遭うケースも少なくありません。
このように、高齢者を取り巻く生活環境の変化と、犯罪の手口の巧妙化・多様化が重なり、高齢者を狙った犯罪は増加傾向にあります。そのため、「自分は大丈夫」と思わず、日頃から防犯対策を見直しておくことが大切です。
高齢者が狙われやすい理由とは
高齢者が犯罪の標的になりやすいのは、判断力の低下だけが理由ではありません。生活習慣や心理面など、複数の要因が重なっています。
- 自宅の固定電話に出る機会が、高齢者に多い
- 長年の生活で築いた資産を持っている割合が比較的高い
- 「人を疑いたくない」という気持ちが利用されやすい
- ひとり暮らしや日中在宅の時間が長く、下見や侵入のタイミングを見極めやすい
警視庁では、特殊詐欺は年齢や性別を問わず誰でもだまされる可能性があるとしつつ、高齢者に被害が多いのは、詐欺の連絡手段として使われやすい固定電話に出る機会が多いことが大きな理由のひとつと説明しています。
「あなたの口座が犯罪に使われている」
「息子が事故を起こした」
こんな風に言われたら、驚き、焦るでしょう。ましてや相手はプロです。冷静に確認する時間を与えないように、混乱させ、不安を煽り、言葉巧みに誘導します。現役世代でさえ、状況によっては騙されてしまうのに、ひとり暮らしの高齢者や、「どうしたの?」と声をかける相手がいない状況では、判断が鈍るのも仕方ありません。そこを、犯罪者はついてくるのです。
知っておきたい高齢者に対する主な犯罪手口
高齢者を狙う犯罪には、いくつかの典型的なパターンがあります。手口の種類をあらかじめ知っておくと、いざというときに気づきやすくなります。
| 犯罪の種類 | 主な手口 | 役立つ対策の例 |
|---|---|---|
| 特殊詐欺 | 親族や警察官を装い現金を要求 | 留守電設定、家族との合言葉を決める |
| 点検商法・かたり商法 | 業者や職員を装って訪問 | ドアを開けずインターホンで確認、ガスや水道の点検と言わされたら最寄りの事業所に電話し確認 |
| 空き巣・忍び込み | 無施錠や古い鍵を狙う | 補助錠・防犯フィルムの活用 |
| ひったくり・路上犯罪 | 帰宅時間帯や駐輪中を狙う バイク等で追い抜きながらカバンを奪う |
人通りの多い道を選ぶ、荷物は車道と反対側に持つ |
特殊詐欺(オレオレ詐欺・還付金詐欺・架空料金詐欺など)
- オレオレ詐欺:親族や警察官、弁護士などを装い示談金などを名目に金銭を求める
- 預貯金詐欺:口座が犯罪に利用されていると伝えキャッシュカードを求める
- 還付金詐欺:税金の還付手続きを装いATMを操作させる
- 架空料金請求詐欺:未払い料金があると偽り金銭を求める
- キャッシュカード詐欺盗:キャッシュカードをすり替えて盗み取る
- SNS型投資詐欺やロマンス詐欺:対面しない相手とのやり取りから金銭を求める
いずれの手口にも「今すぐ」「誰にも言わずに」という誘導が共通しており、急かされたときほど一度立ち止まり、家族や警察に相談することが被害を防ぐ助けになります。
点検商法・かたり商法
ガス設備の点検や自治体職員などを名乗って訪問し、不要な工事や商品を売り込む手口です。
- 実際の点検業者や公的機関の職員は、事前の通知や身分証の提示を行うのが一般的
- アポイントのない訪問や、その場での即決を求める場合は要注意
- 「今日契約すれば安くなる」などの言葉で急かされても即決しない
少しでも不審に感じた時は、身分証の提示のほか、名乗る会社や事業所に電話をして確認しましょう。すぐにドアを開けないことが第一の防犯対策です。
空き巣・忍び込み
鍵をかけ忘れた窓や、古いタイプの鍵は、侵入のターゲットにされやすい傾向があります。
- 侵入には数分程度しかかからないケースも多い
- 短時間の外出や在宅中でも施錠を意識する
- ベランダや裏口など、人目につきにくい場所も見直す
鍵をふたつにする(補助錠の利用)、防犯カメラやセキュリティサービスの活用なども検討しましょう。ゴミを捨てにいくような短時間でも、鍵をかけるようにしましょう。
ひったくり・路上犯罪
帰宅時間帯や駐輪中の自転車が狙われるケースが多く見られます。
- 人通りの少ない道を避ける
- バッグは車道側ではなく建物側に持つ
夕方や夜間、人通りの少ない時間帯を狙う傾向があるため、なるべく多くの人が行き交う昼間に出かけるようにしたいですね。
今日からできる防犯対策
防犯対策は、大がかりな工事だけでなく、日々の習慣を少し見直すことからでも始められます。電話対策・住まいの対策・見守り対策と大きく3つにわけて解説します。
防犯対策1:電話対策
- 普段から留守番電話に設定し、知らない番号にはすぐに折り返さない
- 家族との間で「合言葉」を決めておく
- 自治体が無償で貸し出している自動通話録音機を活用する
- ATMの操作中は電話をしない、させない
迷惑電話防止機能付きの電話機を購入しても、設定や使い方が分からずそのままになっているケースも見られるため、導入するだけでなく実際に使いこなせる状態まで家族がサポートすることも大切です。
防犯対策2:住まいの防犯
- 補助錠や防犯フィルムを取り付ける(国土交通省「住まいの防犯リフォームガイド」参照)
- センサーライトを玄関や勝手口に設置する
- エアコンの室外機や物置など、足場になりやすいものを窓の近くから移動させる
- 訪問者に対し、ドアを開ける前にインターホン越しに用件を確認する
住宅の防犯対策は、できる限り、ご家族が立ち会って行いましょう。防犯フィルムや補助錠はホームセンターなどで購入し、自分でも簡単につけられます。遠方にお住まいの場合は、帰省時などを利用し、定期的に住宅内外の状況を確認し、必要な防犯対策を行いましょう。
防犯対策3:スマートフォン・地域の見守り
- 警視庁の防犯アプリ「デジポリス」などで最新の詐欺情報を受け取る
- 自治体や地域包括支援センターの見守り活動、民生委員による訪問を知っておく
最近は、防犯に役立つスマートフォン向けのアプリも充実しています。たとえば、警視庁の「デジポリス」では、犯罪発生情報や特殊詐欺に関する注意喚起などを確認できます。自治体が独自の防犯アプリやメール配信サービスを提供している地域もあるため、住んでいる自治体の情報も確認してみましょう。スマートフォンの操作に慣れていない高齢者の場合は、家族がアプリの設定や使い方を一緒に確認しておくと安心です。
また、防犯対策はデジタルだけでなく、地域の見守りも重要です。ひとり暮らしや高齢者のみの世帯では、地域包括支援センターや民生委員による見守り活動、自治体の訪問サービスなどを利用できる場合があります。特に家族が遠方に住んでいる場合は、地域で相談できる人や見守ってくれる仕組みがあると、万が一の際にも早く異変に気づきやすくなります。
実際に、地域住民やコンビニエンスストア、金融機関の職員などが高齢者の様子に異変を感じて声をかけ、特殊詐欺の被害を未然に防いだ事例も少なくありません。防犯アプリなどのデジタルの力に加え、家族や地域の人とのつながりを活用することが、高齢者を犯罪から守るための大切な対策になります。
家族みんなで防犯意識を共有する
高齢者の中には、「自分はしっかりしているから大丈夫」「年寄り扱いされたくない」という思いから、防犯の話題に抵抗を感じる人もいます。また、これまでの人生経験から「自分で判断できる」という自信があり、家族から注意されると反発してしまうことも少なくありません。
そのため、「だまされないように」「鍵をきちんとかけて」と一方的に注意するのではなく、家族全員の問題として防犯について話し合うことが大切です。たとえば、「私も危うく詐欺にだまされそうになったことがある」「鍵をかけたつもりが、朝になって開いていたことがあって焦った」など、自分の失敗談や体験を交えながら話すと、「誰にでも起こり得ること」と受け止めてもらいやすくなります。
また、「近所でこんな事件があったそうだから、みんなで気をつけようね」といったように、高齢者だけを特別扱いするのではなく、家族全員で防犯意識を高める姿勢を示すことも効果的です。
家族の話を素直に受け入れにくい場合は、民生委員や地域包括支援センターの職員、親戚や同年代の知人など、第三者から防犯について話してもらうのもひとつの方法です。身近な家族とは違う立場の人の言葉だからこそ、冷静に耳を傾けられるケースもあります。
また、不安が大きい場合は、ホームセキュリティや見守りサービスの利用を検討するのもよいでしょう。
大切なのは、「騙されて老後資金まるごと奪われるぞ」「高齢者は狙われるから危ない」と不安をあおることではありません。「家族みんなが安心して暮らすために、一緒にできる対策を考えよう」という姿勢で繰り返し話し合うことが、防犯意識を高める第一歩になります。
まとめ:安全と安心のためにできることをしましょう
高齢者を狙った犯罪は、正しい知識と少しの備えがあれば、被害を防げる可能性が高まります。「まさか自分が狙われるわけがない」と思うのではなく、家族でおだやかに話し合うことが防犯意識を高める第一歩になります。
- 留守番電話の設定
- 補助錠の取り付け
- インターホンでの確認
- 見守りサービスの検討
すべてを一度に行う必要はなく、できることからひとつずつ取り入れていきましょう。手口の変化に合わせて定期的に見直すことも大切で、家族が集まるタイミングで話題にするだけでも、自然な形で防犯の意識を保つことができます。
不安が大きいときや、離れて暮らす家族のことが心配なときは、自治体の窓口や専門のセキュリティサービスに相談してみるのも選択肢のひとつです。防犯対策は、特別なことではなく、安心して暮らし続けるための日頃の備えです。家族や地域とも協力しながら、安全で安心な毎日を守っていきましょう。
参考:
- 警視庁
- 国土交通省