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デジタル遺産とは?放置するリスクと今すぐできる整理方法

スマートフォンやパソコンに保存された写真、SNSアカウント、ネット銀行の口座など、インターネットやデジタル機器を通じて確認できる財産や情報のことを「デジタル遺産(デジタル遺品)」と呼びます。パスワードや契約内容がわからないまま持ち主が亡くなると、サブスクリプション料金の支払いが続いたり、大切な思い出のデータを家族が見つけられなかったりすることがあります。反対に、元気なうちに少し整理しておくだけで、家族の負担を大きく減らすことが可能です。

近年は、スマートフォンやパソコンだけでなく、キャッシュレス決済やクラウドサービスの利用も広がり、目に見えない場所に大切な情報や資産が蓄積されるようになりました。年齢を重ねてから急に整理しようとすると大変ですから、早いうちから少しずつ準備を進めておきたいですね。

本記事では、デジタル遺産の基本的な意味から、放置した場合に起こりやすいトラブル、そして今日から始められる整理方法まで、わかりやすく紹介します。

デジタル遺産とは何か

デジタル遺産という言葉に、法律上の明確な定義はまだありません。一般的には、スマートフォンやパソコンに保存されたデータや、インターネット上で契約しているサービスのアカウント情報全般を指す言葉として使われています。「デジタル遺品」という呼び方をされる場合もあり、意味としてはほぼ同じものと考えて差し支えありません。

主なデジタル遺産の種類は、次のとおりです。

種類 具体例
端末内のデータ 写真・動画・文書ファイル
コミュニケーション関連 SNSアカウント(LINE・Instagram・Xなど)、メールアカウント
金融関連 ネット銀行口座、証券口座、キャッシュレス決済(PayPayなど)
契約関連 動画・音楽配信などのサブスクリプション契約
保存領域 クラウドサービス上のデータ

総務省の令和7年通信利用動向調査によると、スマートフォンでのインターネット利用率は20〜59歳の各年代で約9割にのぼり、60代で約8割、70代でも半数以上が日常的に利用しています。年齢を問わず、デジタル遺産は誰にとっても身近なテーマになっているといえます。

写真アルバムや手紙など、目に見える形で残る「遺品」とは異なり、デジタル遺産はパスワードなどで保護されているため、家族が中身を確認しづらいという特徴があります。この特徴こそが、次に紹介するトラブルの主な原因になります。

デジタル遺産を放置するとどうなるか(家族が困ってしまうポイント)

整理をしないまま万一のことが起こると、家族が思わぬ手間やトラブルに直面する場合があります。特に、スマートフォンにロックがかかっていて開けない場合、中に保存された契約情報や資産の情報を家族が把握できず、手続きが長期間止まってしまうことも珍しくありません。国民生活センターや消費生活センターに寄せられた相談事例として、次のようなケースが報告されています。

よくあるトラブル 内容
サブスク料金の継続 動画配信や課金サービスの解約ができず、料金の引き落としが続く
資産の把握が困難 ネット銀行やコード決済(QRコードやバーコードを表示・読み取りして支払いをするキャッシュレスサービス)の契約先がわからず、資産の全体像をつかめない
相続手続きの長期化 コード決済サービスの相続手続きに1カ月以上かかった事例もある
訃報を伝えられない SNSでつながる友人・知人に連絡が取れない

サブスクの解約漏れや相続手続きの長期化といったトラブルの多くは、パスワードや契約内容の手がかりが残されていないことが原因です。実際、国民生活センターにはこうした相談が複数寄せられており、決して他人事ではありません。裏を返せば、生前に情報を整理しておくだけで防げるトラブルがほとんどです。「デジタル終活」という言葉で呼ばれる取り組みは、決して難しいものではなく、できる範囲から少しずつ始められます。

生前にできるデジタル遺産の整理方法

デジタル遺産の整理と聞くと難しく感じるかもしれませんが、特別な知識は必要ありません。元気なうちに次のようなステップで整理を進めておくと、いざというときに家族の負担を大きく減らせます。一度にすべてをやろうとせず、休日に少しずつ進めるくらいの気持ちで取り組むと、無理なく続けられます。

ステップ 内容
① 棚卸し 利用しているアカウントやサービスを一覧にする
② 仕分け 残したいデータと削除してよいデータを分ける
③ 整理・解約 使っていないアカウントを解約・削除する
④ 記録 パスワードの保管場所や連絡先を書き残す
⑤ 共有 家族に伝える範囲をあらかじめ決めておく

ステップを実行する際は、次の2つの方法を活用すると、より確実に整理を進められます。

パスワード管理ツールの活用

ID・パスワードを一元管理できるアプリを使えば、手書きのメモより安全かつ最新の状態を保ちやすくなります。

「もしものときの備え」機能の活用

スマートフォンやサービスによっては、家族があらかじめ指名されたアカウントにアクセスできる機能が用意されています。設定しておくと、いざというときの手続きがスムーズになります。

対象 公式機能 家族ができること 主な条件
iPhone・iPad・Mac 故人アカウント管理連絡先(Apple) 写真・メッセージ・メモ・ファイル・バックアップ等の閲覧 事前登録とアクセスキー、死亡を示す書類が必要。アクセス期間は承認から3年間。キーチェーン内のパスワード・パスキー、支払い情報、購入済みコンテンツは対象外
Android・Gmail・Googleドライブ・Googleフォト等 アカウント無効化管理ツール(Google) 指定したデータのダウンロード、または通知の受け取り 死亡時だけでなく、一定期間アカウントが使われないことが発動条件。連絡先は最大10人まで指定でき、共有するデータの種類は相手ごとに設定可能

※これらの機能の仕様や対象データの範囲は、各社のアップデートによって変更される場合があります。実際に設定・確認を行う際は、上記のリンク先で最新情報をご確認ください。

定期的な見直しを習慣に

デジタル関連の情報は、サービスの仕様変更など移り変わりが早いという特徴があります。一度整理して終わりにするのではなく、半年から1年に一度など、タイミングを決めて定期的に見直すことが大切です。あわせて、新しく始めたサービスがあれば、その都度記録に追加していくと、情報が古くならず安心です。

「デジタル遺産」エンディングノートへの記載ポイント

整理した情報は、エンディングノートにまとめておくと家族に伝わりやすくなります。エンディングノートは、財産や希望を書き残すためのノートで、法的な効力はありませんが、家族への大切なメッセージとして役立ちます。必要な項目を書いておくと、万一のときに家族がスムーズに手続きを進められます。パスワードそのものを書き込むことに不安がある場合は、保管場所やヒントを書く方法でも構いません。

記載項目 ポイント
ログインID・パスワードの保管場所 パスワード管理ツール名や保管場所を記載する
契約中サービスの一覧 サービス名・利用目的・問い合わせ先をまとめる
削除してほしいデータの意思表示 見られたくないデータがあれば明記する
死後の希望 追悼アカウントへの切り替えなど、希望があれば記載する
最終更新日 記載内容を見直した日付を残しておく

追悼アカウントとは、FacebookやInstagramが用意している、亡くなった方専用のアカウント状態です。切り替えると、プロフィールに「追悼」の表示がつき、ログインはできなくなります。故人になりすました利用を防ぎながら、投稿や写真をそのまま「思い出の場」として残せる仕組みです。ただし、対応しているSNSは一部に限られます。追悼アカウントとして残してほしいか、削除してほしいか、希望を書き添えておくとよいでしょう。

最後の「最終更新日」は、意外と見落とされがちな項目です。デジタル関連の情報はアップデートが早いため、記載した日付を残しておくことで、後から見た家族が「最新の情報かどうか」を判断しやすくなります。

スマートフォン利用者が亡くなった場合の公式手続きページ一覧

ここまでは元気なうちにできる準備を紹介してきましたが、実際にご家族が手続きを行う場面に備えて、主要サービスの公式手続きページも確認しておきましょう。

スマートフォンのメーカーや通信キャリアは、利用者が亡くなった場合の手続き方法を、それぞれ公式サイトで案内しています。もしもの時、手続きが必要になった場合には、下記の公式ページを確認しながら進めると安心です。iPhoneをお使いの場合はApple、Android端末をお使いの場合はGoogleアカウントの手続きもあわせて確認しておくと、写真やデータの扱いで困りにくくなります。

区分 手続きの内容 公式ページ
Apple(iPhone) 故人アカウント管理連絡先の設定、アクセスの申請、Apple Accountの削除申請 Appleサポート「亡くなったご家族のApple Accountへのアクセスを申請する」
Google(Android) アカウント無効化管理ツールの設定、故人のアカウントに関するリクエスト送信 Googleアカウントヘルプ「故人のアカウントに関するリクエストを送信する」
キャリア 手続きの内容 公式ページ
NTTドコモ 契約者の死亡による解約・承継の手続き案内 ドコモ公式「ご契約者の死亡によるお手続き」
au(KDDI) 契約者が亡くなった場合の解約手続きに関するFAQ au公式「契約者が亡くなった場合の手続きについて知りたい」
ソフトバンク 契約者が死亡した場合の「承継」または「解約」手続き案内 ソフトバンク公式「契約者が死亡した場合、手続きは何か必要ですか?」

格安SIM等を利用している場合や、契約している通信会社がわからない場合は、料金の請求明細やクレジットカードの利用履歴から契約先を確認したうえで、各社のカスタマーサポートに問い合わせる方法が確実です。

よくある質問

Q. デジタル遺産にも相続税はかかりますか?

ネット銀行の預金や証券口座の資産などは、通常の相続財産と同じように相続税の対象になる場合があります。具体的な取り扱いについては、税理士など専門家に確認すると安心です。

Q. パスワードを紙に書いて保管しても大丈夫ですか?

金庫や鍵付きの引き出しなど、家族以外の目に触れにくい場所で保管するのも、有効な方法のひとつです。オンラインの管理ツールと組み合わせる方法もあります。

Q. 何から手をつければよいか、わかりません

まずは、スマートフォンやお使いのパソコンの中にどのようなアプリやサービスを利用しているか、一覧にすることから始めてみてください。一覧を作るだけでも、整理の見通しが立てやすくなります。

Q. 亡くなった人のスマホの画面ロックは、携帯ショップで解除してもらえる?

携帯ショップやメーカーでは、名義変更や端末の初期化には対応していますが、画面ロックそのものの解除は基本的に行っていません。パスコードが分からない場合、AppleやGoogleが用意している故人のアカウント向け手続き(本記事で紹介した公式ページを参照)を使えば、アカウント内のデータにアクセスできる可能性があります。

デジタル遺産の整理を、今日から少しずつ

スマートフォンやインターネットの利用が当たり前になった今、デジタル遺産は誰にとっても身近なテーマです。整理をしないまま放置すると、家族に思わぬ手間をかけてしまうこともありますが、元気なうちに少しずつ準備を進めておけば、そうした心配は大きく減らせます。

パスワードや契約サービスの情報をまとめ、エンディングノートに記録しておくこと、そして半年から1年に一度など定期的に内容を見直しておくことが、家族への何よりの安心につながります。デジタル関連の情報は移り変わりが早いからこそ、こまめな更新を習慣にできれば、いつでも自分らしい暮らしを前向きに続けていけます。難しく考えず、できるところから“ひとつずつ”、今日から始めてみてください。