耳よりだより

高齢者の肺炎は命にかかわる!身を守るために実践してほしい予防策

肺炎で亡くなる人の約98%が65歳以上の高齢者であることをご存じでしょうか?
「予防接種を受けたから大丈夫」や「健康には自信がある」と思っている方もいるかもしれませんが、高齢者は肺炎にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。

高齢者にとって、肺炎は命にかかわる危険な疾患の一つです。そのため、肺炎にならないために、日頃からしっかりと予防することが重要になります。この記事では、高齢者の肺炎の症状や予防について詳しく解説しています。大切な人の命を守るために、ぜひ参考にしてください。

高齢者の肺炎の特徴

肺炎は、肺炎球菌などの細菌やウイルスが肺の奥に侵入し、炎症を起こすことで生じる病気です。高熱が続くほか、呼吸困難や息切れなどの症状を引き起こします。

ただし、高齢者の場合、肺炎でよくみられる咳や痰、高熱、息苦しさといった典型症状が出ないことがよくあります。

一般的な肺炎の症状 肺炎を発症している高齢者に見られる症状
  • 咳が出る
  • 痰が出る
  • 38度以上の高熱
  • 息苦しい
  • 胸が痛い
  • 咳が出ない
  • 痰が出ない
  • 体を触ったら熱い(微熱程度)
  • ボーっとしている
  • 動きが鈍い
  • 体がだるそう
  • 何となく元気がない
  • 食欲がない

一見、肺炎とは無関係に思える症状が、肺炎によって引き起こされていることもあります。
肺炎に気づいたときには、症状が悪化しているケースが少なくないため、注意が必要です。

高齢者の命を守る!肺炎の予防策8つ

肺炎にならないための予防策 具体的な方法
細菌やウイルスを体内に入れない
  • こまめな手洗いを行う
  • 毎食後や寝る前に歯みがき・うがいを行う
  • マスクを着用する
免疫力を強める
  • バランスの取れた食事をとる
  • 適度に運動する
  • 禁煙する
ワクチン接種をする
  • 肺炎球菌の予防接種を受ける
  • インフルエンザの予防接種を受ける

それぞれの具体的な予防策について、解説していきます。

1.こまめな手洗いを行う

細菌やウイルスが体内に入り込まないように、こまめな手洗いを行いましょう。
手を洗うことで、手に付着した細菌やウイルスを洗い流すことができるからです。

以下に該当するタイミングで手を洗う習慣をつけましょう。

<手を洗うタイミング>

  • 帰宅後
  • トイレ後
  • 調理の前後
  • 食事の前後
  • くしゃみの後

細菌やウイルスを体内に取り込まないためには、正しい手の洗い方を実践することが大切です。以下のイラストを参考に、手を適切に洗いましょう。

細菌やウイルスは石鹸に弱いため、必ず石鹸を使って手を洗うようにしましょう。

2.毎食後や寝る前に歯みがき・うがいを行う

口の中を清潔にするために、毎食後や寝る前には必ず歯みがき・うがいを行いましょう。口腔内に細菌があると、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなるからです。

高齢者になると唾液の分泌が低下するので、どうしても口腔内に細菌が発生しやすくなります。細菌が発生すると虫歯のリスクもありますから、毎食後には必ず丁寧に歯をみがきましょう。口腔内の汚れは目に見えないものです。歯みがき時には、みがき残しがないように、歯の裏側からみがいたり、市販されているマウスウォッシュなどを使ったりしてもいいでしょう。

3.マスクを着用する

ウイルスや細菌を体内に入れないためには、外出時にマスクを着用することも効果的です。
特にインフルエンザなどの感染症が流行している時期や、混雑する場所に行く際には、できるだけマスクを着用するようにしましょう。

予防効果を高めるには、不織布製のマスクがおすすめです。一度使用したマスクは汚れているので再利用はせず、毎回新しいものを使いましょう。

4.バランスの取れた食事をとる

偏った食事を続けると、肺炎になることがあります。健康を気にして、野菜や魚ばかりを食べたり、「手軽に食べられるから」とコンビニ弁当やインスタント食品が続いたりすると、慢性的な低栄養状態に陥り、免疫力の低下を招くからです。

免疫力を高め、肺炎にならないためには、「一日三食」「栄養バランスの良い食事」をとりましょう。特に、ビタミンA、C、Eとタンパク質をしっかりとることが大事です。

栄養素 多く含まれる食品
ビタミンA 緑黄色野菜(ほうれん草、にんじん、かぼちゃ)レバーなど
ビタミンC ブロッコリー、ピーマン、いも類、柑橘類
ビタミンE

キウイフルーツ、アボカド、ナッツ類、植物油

タンパク質 肉、魚、卵、大豆製品、牛乳、乳製品

5.適度な運動をする

筋肉量が減ると免疫力が低下するため、適度な運動も必要です。ラジオ体操やスクワットなど、無理なくできる運動を行いましょう。

おすすめの運動はウォーキングです。歩数よりもスピードを意識して早足で歩くと、筋肉量アップが期待できます。

このほかの、免疫力を高める方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

免疫力も老化する?高齢者の免疫力低下を防ぐ7つのポイント

6.禁煙する

もしあなたがタバコを吸っているなら、すぐに禁煙しましょう。タバコの煙は、肺や気管支などの細胞を傷つけ、免疫機能を低下させるからです。喫煙すると、肺炎のリスクを大幅に高めます。

禁煙1ヶ月後には、咳などの呼吸器症状の改善、禁煙1年後には、肺機能の改善が期待できるとされています。禁煙はいつ始めても遅くはありません。肺炎を予防し、いつまでも元気でいるためにも、できるだけ早く禁煙しましょう。

7.肺炎球菌の予防接種を受ける

肺炎の原因として最も多く、重症化しやすいのが、肺炎球菌です。肺炎球菌による肺炎などの感染症を予防し、重症化を防ぐにはワクチン接種が有効です。そのため、65歳以上の人は「成人用肺炎球菌ワクチン」の接種が強く推奨されています。

▼肺炎球菌ワクチンの接種が推奨される人
  • 65歳以上の人
  • 心臓の疾患がある人(心筋梗塞や狭心症など)
  • 呼吸器の疾患がある人(喘息やCOPDなど)
  • 糖尿病や腎臓の病気などの持病がある人
  • 脾臓摘出を受けた人など

成人用肺炎球菌ワクチンは、定期接種制度があります。対象の有無ついては、厚生労働省のウェブサイト「肺炎球菌感染症(高齢者)」でご確認ください。

8.インフルエンザの予防接種を受ける

インフルエンザが流行する前に、インフルエンザの予防接種を受けておきましょう。インフルエンザに感染したことで抵抗力が弱まり、肺炎を引き起こすきっかけになることがあるからです。

インフルエンザは予防接種費用の助成が受けられることがあります。お住まいの市町村や地域包括支援センターなどに問い合わせてみるといいでしょう。

高齢者に多い誤嚥(ごえん)性肺炎の予防法

高齢者の肺炎は、ほかの年齢層では見られない「誤嚥性肺炎」が多いのが特徴です。誤嚥性肺炎とは、唾液に含まれた肺炎球菌などの細菌が肺に入り込むことで発症する疾患です。

高齢になると、気管に入ったものを咳で外に出す力や、飲み込む力が弱くなり、誤嚥が起こりやすくなります。誤嚥性肺炎は食事中だけでなく、睡眠中に唾液が肺に流れ込んで発症することもあるので注意しましょう。

▼誤嚥性肺炎の予防法
  • 口の中を清潔にする
  • 食事前に水分を摂る
  • 食事中はテレビを消し、食事に集中する
  • 食事は一口で食べる量を少なめにする
  • ゆっくりとよく噛んで食べる
  • 食べ物に適度なとろみをつける
  • 体を起こして食事をする
  • 食後2時間は横にならないようにする

歯が欠けていると誤嚥の原因になることがあります。歯の具合が悪い人は治療を受けましょう。

気になる症状は、早めに医師に相談を

見逃されがちな高齢者の肺炎を発見するには、家族や介護者の気づきも重要です。
特に、脳梗塞、パーキンソン病、認知症などの持病がある場合は、嚥下障害が起こりやすく、それが誤嚥性肺炎の発症につながるため、食事の内容にも工夫が求められます。

「ALSOK ジョイライフ」の各施設では、栄養面に配慮するほか、飲み込み・噛み砕きの困難な方のために、とろみをつけたり細かく刻むなどのお食事を提供しています。
高齢者にとって肺炎は命にかかわる疾患ですから、「もしかして?」と思ったら、早めに病院を受診しましょう。