免疫力も老化する?高齢者の免疫力低下を防ぐ7つのポイント
「最近、口内炎ができやすい」
「病気やケガの治りが遅くなった」
このように感じている人は、「免疫力」が低下しているかもしれません。
病気や感染症を防ぐのに重要な免疫力ですが、加齢をはじめとするさまざまな原因によって低下します。いつまでも元気に過ごすためには、免疫力を高めることが重要です。
この記事では、高齢者の免疫が低下する主な原因と対策について詳しく解説します。
「病気を予防したい」「元気に過ごしたい」という方は、ぜひ最後までお読みください。
そもそも「免疫」とは?
免疫とは、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物から、体を守る仕組みのことです。
免疫には、次の2つの役割があります。
- 異物(細菌やウイルスなど)の侵入を防いだり、排除したりする
- 体内の老廃物や変異した細胞(がん細胞)などを処分する
このように、免疫は細菌やウイルスなどから体を守るだけでなく、健康維持にも重要な役割を担います。免疫には、「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります。
自然免疫
自然免疫は、生まれながらに体内に備わっているものです。体の中に異物(抗原)が侵入してくると、すぐに抗体を作って攻撃してくれます。
獲得免疫
獲得免疫は、体内に侵入した異物に対する抗体を作ることで得られる「後天性の免疫」です。
自然免疫で取り逃がした抗原でも、再び体内に侵入した場合、すでに記憶している免疫が反応し、感染を防いだり症状を軽くしてくれたりします。
一度かかると二度目はかかりにくくなる麻疹や風疹などの感染症は、こうした獲得免疫の働きによるものです。この獲得免疫の仕組みを利用した病気の予防法がワクチンです。
免疫力が低下するとどうなる?
免疫力が低下すると、病気にかかりやすいことは広く知られていますが、具体的には以下のような状態になるリスクがあります。
- 風邪をひきやすい
- 細菌やウイルスに感染しやすい
- 口内炎ができやすい
- のどが腫れやすい
- 疲れやすい
- 肌荒れしやすい
- 病気やケガが治りにくい
- 抗生物質や予防接種が効きにくい
高齢者の場合は、上記に加えて、「病気が重症化しやすくなる」「フレイル・サルコペニアになりやすくなる」リスクがあるので、より注意が必要です。
免疫力はなぜ低下するの?
免疫力は、20歳頃を境に下がりはじめ、40代でピーク時の50%、70代では10%前後に低下する人が多いとされています。これは、加齢とともに免疫細胞の数が減ったり、免疫細胞の活性が低下したりするためです。
ただし、免疫力は加齢以外の要因でも低下します。
- 食生活の偏り
- ストレス
- 疲労
- 睡眠不足
- 運動不足
- 喫煙
- 過度の飲酒
このほか、免疫力が低下する可能性として考えられるのが、病気や治療薬の影響です。糖尿病や自己免疫疾患などの病気は、免疫力を低下させる可能性が指摘されています。
また、免疫システムを抑制する薬や治療も、免疫力を低下させる原因になります。
免疫力低下を防ぐ7つのポイント
免疫力を向上させるためには、日常生活の習慣を見直すことが大切です。
ここでは、免疫力をアップにつながる7つの方法をご紹介します。「これならできそう」と思うものからぜひ試してみてください。
1.腸内環境を整える
免疫力アップには、腸内環境を整えることが大切です。
免疫細胞の60%〜70%は腸にあるといわれており、腸内バランスを整え、善玉菌を増やすことが免疫力アップにつながるからです。
善玉菌を多く含む食品 | 納豆、みそ、ヨーグルト、チーズ、キムチなど |
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善玉菌のエサとなる食品 | 野菜、果物、キノコ、海藻類など |
善玉菌は腸内に住み着かないとされているため、発酵食品は毎日の食事に少しずつ取り入れるといいでしょう。しかし、発酵食品の中には、食塩を多く含むものもあるので、食べ過ぎには注意してください。
2.バランスのいい食事をとる
バランスのいい食事、特にタンパク質とビタミン、ミネラルは免疫力を維持するために不可欠です。さらに高齢者の場合、量をしっかり摂ることも大切。
食べる量が減り痩せていくと、免疫力が低下し、要介護のリスクを高めてしまいます。
タンパク質が多く含まれる食品 | 肉、魚介類、卵、牛乳・乳製品、大豆製品など |
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ビタミンAが多く含まれる食品 | 緑黄色野菜(ほうれん草、にんじん、かぼちゃなど)、うなぎ、海苔など |
ビタミンCが多く含まれる食品 | ピーマン、ブロッコリー、いちご、レモン、キウイフルーツ、イモ類など |
ビタミンEが多く含まれる食品 | ナッツ類、アボカド、キウイフルーツなど |
しかし、食べ過ぎはNGです。食べ過ぎると、腸内環境が悪化してしまい、免疫力を下げてしまいます。食事量は「腹八分目」が免疫力アップの観点からもおすすめです。
食事の内容はもちろん、食べる量にも意識を持ちましょう。
3.よく噛んでゆっくり食べる
よく噛んでゆっくり食べることは、免疫力をアップさせるために役立ちます。よく噛むことで唾液の分泌が促進されるからです。唾液には、免疫力を高める酵素が含まれています。
しっかり噛むことで食べ物を細かく分解し、消化器官が栄養素をより効率的に吸収するのを助けます。また、ゆっくり食べることで満腹感が得られやすくなるので、食べ過ぎを防ぐメリットもあります。
4.睡眠の質を上げる
免疫力は睡眠中に強化されます。質の良い睡眠を取るためには、以下を習慣化させるといいでしょう。
- 寝る時間と起きる時間を一定にする
- 就寝前の飲酒やタバコ、携帯電話やパソコンは控える
- 朝食は必ず食べ、夕食は寝る2~3時間前までにすませる
- 朝起きたら太陽の光を浴びる
高齢者の睡眠については、以下の記事でも詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
5.体温を36.5度~37.1度にする
免疫細胞が正常に働く体温は、36.5度〜37.1度程度といわれています。
体温が1度下がると免疫力は30%落ちるとされていることから、適切な体温の維持も重要です。
お風呂では湯船に浸かる、靴下や膝掛けを活用する、温かい飲み物を飲む、など体を冷やさない工夫をしましょう。1日1回、体温を測定する習慣も、免疫の状態を知る手がかりになります。
6.ストレスを上手に解消する
強いストレスは免疫力低下の大きな原因です。
人と会話する、趣味を楽しむ、動物とふれあう、深呼吸をするなどストレスを抱え込まない工夫に努めましょう。
笑うこともNK細胞(免疫細胞)を活性化させるのに効果的です。口角を上げ、声を出して笑うなど、たとえ作り笑いでも効果が期待できるので、ぜひ試してみましょう。
7.適度な運動をする
免疫力を高めるには、適度な運動が有効です。適度な運動は、免疫機能を強化するだけでなく、ストレスを軽減し、心身の健康を促進します。
とはいえ、どんな運動でもよいわけではありません。運動習慣のない人がいきなり過度な運動をすると、ストレスが溜まり、免疫機能に悪影響を及ぼす恐れがあります。
そのため、無理なく継続できる運動を行うといいでしょう。
高齢者におすすめの運動は、軽く汗をかく程度の軽い有酸素運動です。ウォーキングやストレッチなど、気軽に始められる運動を習慣にするといいでしょう。
免疫力を高めるには、「ストレスにならない習慣」を取り入れよう
免疫力がアップする習慣を意識して過ごすと、感染症などの病気から身を守れるようになります。ただし、免疫力を上げたいからといって、無理は禁物です。これまでの生活をガラッと変えることはかえってストレスにつながります。免疫力アップのための習慣も、ストレスを感じながら続けると、逆効果になってしまいます。
そのため、「これならできそう」「続けられそう」という習慣を選んで、無理のない範囲で実践してくださいね。